Pink Floydの1983年のアルバム The Final Cut は、バンドのコンセプトメーカーだった Roger Waters の個人的体験、第二次大戦で戦死した父親への想いに基づくプライベート色の濃いアルバムで、かつ、キーボード奏者のRick Wrightも不在のレコーディングだったということで、ほぼWatersのソロアルバムと言えそうな内容であったため、発表当時は否定的な批評が多かった作品でした。
Sally Oldfieldのイギリスでの音楽活動の最後のアルバムとなったのが、1983年リリースの Strange Day In Berlin という作品。このタイトルからして、この時点ですでに視線はドイツにあったのかも知れないです。アルバムのプロデュースは、Sally本人とHans Zimmerの共同で行われていて、Zimmerはシンセサイザーを使ってアルバムの基礎となるサウンドを形作っています。おそらくこれ以降のユーロポップ路線の足掛かりとなったアルバムではないかと思います。
Sally Oldfield / Strange Day In Berlin
Sally Oldfieldが書く曲は少しクセがあって、好みが分かれるところがあると思いますが、このアルバムのSide 1(前半3曲)はどれも完成度が高く甲乙つけがたい曲と思っています。この「A Million Light Years Away From Home」はアルバムの1曲に収録された曲で、Hans Zimmerのスペーシーなシンセオーケストレーションにのせてドラマチックに歌う、別離した恋人への想いを綴った歌です。
この曲のクライマックスは13分ごろから始まります。ディレイのかかったシンセシーケンスにPhillipsのドラムが絡み、導入部のメロディが奏でられると徐々にドラムの手数が多くなり、Oldfieldの独特なエレクトリックギターサウンドとともに盛り上がっていく様は、Ommadawn Part 1のクライマックス部(アフリカンドラムのパート)に似た高揚感が得られます。なんといってもPhillipsのドラミングが圧倒的。最後はベルが1回鳴って締めくくられる至福の8分間です。
Side 2の1曲目は、Oldfieldの歌モノでは一番有名な「Moonlight Shadow」です。この曲はシングルカットされ、イギリスをはじめとするヨーロッパでスマッシュヒットとなりました。この曲は、ギター、ベース、ドラム(それとFairlight CMI)からなるフォークロック調のサウンドにのせてMaggie Reillyが歌うポップで美しいな曲なのですが、間奏ではOldfieldらしい音色のギターソロを聴くことができます。また、アルバムジャケットのイラストと絶妙にリンクしてこのアルバムの核となる曲であることがわかります。