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Mike Oldfield アルバム紹介 その5:Platinum

このアルバムがリリースされた1979年の年間ヒットチャートをUSとUKで調べてみました。

Billboard Year-End Hot 100 singles of 1979 - Wikipedia

1979 in British music - Wikipedia

上位20曲を見てみると、USでは半数以上がディスコソング、UKのほうはディスコソングは少なくニューウェイヴ系の曲が結構目立ちますね。USではDonna Summerが圧倒的に受けていたのがよく分かります。ちなみに、UKの年間1位 Art Garfunkelの「Bright Eyes」はアニメ映画「ウォーターシップダウンのうさぎたち」のテーマ曲でした。

 

さて、前作 Incantations を発表後、Mike Oldfieldは、流行りのディスコのフォーマットを取り入れたシングル「Guity」を発表したり、大掛かりなコンサートツアーを敢行したりと活発な活動だったようです。そして1979年の後半にリリースされたのがこのアルバム Platinum でした。

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Mike Oldfield / Platinum

Platinum
    part 1- Airborne
    part 2- Platinum
    part 3- Charleston
    part 4- North Star/Platinum Finale
Woodhenge
Into Wonderland
Punkadiddle
I Got Rhythm

「Platinum」は4つのパートで構成された約19分の組曲形式の作品です。この曲で特徴的なのはディスコビートにも通ずるキックドラムの4つ打ちの導入で、Part 1以外では全編で聴くことができます。Part 1は前作 Incantation をバンド形式でコンパクトにしたような曲で、個人的にはもう少し長くてもいいのでもうひと展開欲しいところです。一方でPart 2は繰り返しが多くちょっと冗長かも。Part 3で曲調がガラッと変わり、文字通りチャールストン風のリズムの曲になっています。Part 4の「North Star」は、アメリカのミニマル音楽の作曲家 Philip Glass の同名作品をディスコサウンド風にアレンジしたものです。後半のOldfieldならではの音色でのギターソロが聴きどころです。

「Woodhenge」からはじまるアナログ盤のSide 2以降は、一変して色々な音楽要素をちりばめた小品集となっています。散漫と言われると確かにそうかもしれません。

「Woodhenge」は初期の三作の一部に埋め込まれていてもおかしくないようなアンビエントな曲。でもこれ単品ではとりとめがないような気もします。

「Into Wonderland」は、「I Got Rhythm」でもリードヴォーカルを取るWendy Robertsが歌うシンプルなラブソングで、演奏もシンセ(ベースもシンセ?)とドラムだけのシンプルなものですが、アナログ盤のアルバムの初回プレスのみ、OldfieldとNicko Ramsdenが歌う「Sally」という曲が収録されていました。これには、「Sally」を聴いたヴァージンレコードの創始者Richard Bransonがこの曲を嫌って「Into Wonderland」に差し替えさせたという経緯があるようですが、確かにオリジナル「Sally」のサビの歌詞が

"Sally, I'm just a gorilla, I'll say I'll love you ever more

Even an ape from Manila couldn't stop me knocking on your door"

(Sally、僕はただのゴリラさ。君にずっと愛しているって言い続けるよ

 マニラの猿でさえ、僕が君のドアをノックするのを止められやしない)

という(ちょっと下品な)ものだったので、Oldfieldのアルバムにはふさわしくないと判断したのかもしれません。ある意味間違っていない部分はあると思いますが、オリジナルの「Sally」では、Platinum Part 1の一節を引用していたり、印象に残るギターソロが入っていたり、前後の曲との繋がりがスムーズだったりと良い面がたくさんあったので、ボツになったのは非常に残念です。(2012年リリースのリマスター盤のボーナストラックにも収録されませんでした。すでにマスターテープが無いのかも?)

ありがたいことに現在はYouTubeでもオリジナルの「Sally」を聴けたりします。

https://www.youtube.com/watch?v=WTn44G8q7t0

続く「Punkadiddle」は、当時Oldfieldが嫌っていた「Punk」に、「人をだまして金を取る」といった意味の単語「diddle」をくっつけた造語のタイトルで、ケルト民謡風のメロディをパンク風にアレンジした曲になっていて、曲名はともかくOldfieldのギターが堪能できる曲だと思います。ちなみにこの曲の最初の約50秒間は、オリジナル「Sally」のエンディング部分になっています。

最後の「I Got Rhythm」はGeorge Gershwinの有名な曲ですが、ジャズの要素を抜き取ったようなアレンジになっています。最後の部分でチューブラーベルを叩いているのが「Sally」のモチーフとなった当時のOldfieldのガールフレンドのSally Cooperとのこと。

このアルバム、一部のレコーディングをアメリカで行ったり、アメリカのミュージシャンを起用したり、アメリカの作曲家の曲を採用したりとアメリカを指向した作品になっていて、これらは過去の作品の呪縛から逃れるための、Oldfieldの新しいチャレンジだったのだと思います。

 

Part One - Airborn - YouTube

Part Two - Platinum - YouTube

Part Three - Charleston - YouTube

Part Four - North Star / Platinum Finale - YouTube

Woodhenge - YouTube

Into Wonderland (Remastered) - YouTube

Punkadiddle - YouTube

I Got Rhythm - YouTube