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Mike Oldfield アルバム紹介 その17:Voyager

Warner Music UKへ移籍する際に、3作のアルバムをリリースする契約となっていたMike OldfieldTubular Bells IIThe Songs of Distant Earth に続く3作目のアルバムは、レコード会社からのオファーに基づき制作されました。

どうも、当時「リバーダンス」などのアイリッシュ/ケルト音楽が人気となっていた時代背景に便乗して、Oldfieldにケルト音楽をテーマにしたアルバム制作を依頼したらしく、Oldfieldの音楽自体もケルト音楽に根差したものであることから、本人も快諾したようです。

また同時期、Oldfield自身も太極拳や瞑想といったものに傾倒していたことから(前作制作時点ではCGによるビデオ制作に興味を持っていたのにどうも飽きたらしい・・・)、出来上がった音楽はスピリチュアルな雰囲気漂う作品集になりました。

Mike Oldfield / Voyager

 

アルバムのレコーディングは、ロンドンのRoughwood Croftにある自宅スタジオ(1989年ごろから使用)で行われましたが、1996年に入って、なんとスペインのイビサ島に移住してしまいました。イギリスと比較すると温暖な気候であることも理由のひとつのようですが、実はスペインではOldfieldの音楽の人気が非常に高く、そういった環境も移住のきっかけだったように思われます。

アルバムジャケットの写真もイビサ島で撮影されたもののようで、調べてみると、背景に移っている島は、イビサ島の西海岸から少し離れたところにある Es Vedra(エス・ヴェドラ)という無人島で、なにやらこの島周辺は磁場が非常に強く、パワースポットとして人気の島とのこと。

どうでもいいことですが、Google Mapのストリートビューでは、エス・ヴェドラ島はこんな風に見えています。

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<トラックリスト (カッコ内は作者)>
1. The Song of the Sun   (Bieito Romero)
2. Celtic Rain   (Mike Oldfield)
3. The Hero  (Traditional)
4. Women of Ireland  (Traditional)
5. The Voyager  (Mike Oldfield)
6. She Moves Through the Fair  (Traditional)
7. Dark Island  (Traditional)
8. Wild Goose Flaps its Wings  (Mike Oldfield)
9. Flowers of the Forest  (Traditional)
10. Mont St Michel  (Mike Oldfield)

 

本作 Voyager は、過去2作のようなアルバム全体がシームレスに繋がっている形式の作品では無く、10曲が独立して収録されています。10曲中4曲はOldfieldの作曲ですが、残り6曲はトラディショナル(伝承歌)もしくは他のアーティストの曲をOldfieldがインスト曲としてアレンジしたカバーとなっています。

サウンド面では、前作がエレクトリックギターとシンセとピアノが主体で、リズムループとSE、ヴォイスが加えられたエレクトロニックなサウンドだったのに対して本作では、Oldfield自身のギター、シンセ、ピアノの他はケルト音楽のミュージシャンによる演奏(フィドル、パイプ、ホイッスル、バウロン等の打楽器)がフィーチャーされていいて、アコースティック感が戻ってきています。ただし、シンセによる背景音やエフェクトの影響か、生々しさよりは浮遊感が重視されるようなニューエイジミュージックの色合いが濃いサウンドになっています。また、12分を超える大作「Mont St Michel」ではロンドン交響楽団の演奏が大きくフィーチャーされています。

 

1. The Song of the Sun
この曲はスペインのトラッドフォークバンド Luar Na Lubre の「O son do ar」という曲のカバー。オリジナルの方は後半でいくつかの展開があるのですが、Oldfieldによるカバーは前半部の主旋律をなぞった形になっています。

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2. Celtic Rain
Oldfieldのオリジナル曲。ハープ風のシンセ(?)のアルペジオにギター(ギターシンセ?)+シンセパッドというシンプルな構成の演奏です。

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3. The Hero
スコットランドの作曲家でありフィドラーである James Scott Skinner が1903年に作曲した「Hector The Hero」が原曲。バグパイプで演奏されることが多いようです。Oldfieldのカバーでもバグパイプ風の通奏低音をバックに、ヴァイオリンとフルートがメロディを奏でます。Oldfieldはアコースティックギターで控えめにサポートしている感じですね。後半はイーリアンパイプが参加して盛り上がります。

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4. Women of Ireland
1968年にアイルランドの作曲家 Sean Ó Riada によって作曲された曲。ジャズミュージシャンのBob Jamesもアルバム Threeでカバーしているようです。Oldfieldのギターによるアンサンブルとしてアレンジされています。シングルとしてもリリースされました。

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5. The Voyager
Oldfieldのオリジナル曲。バウロン風のパーカッションをバックにOldfieldのギターとイーリアンパイプが交互にメロディを取る構成となっている曲です。

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6. She Moves Through the Fair
この曲は有名なトラッド曲でポピュラー音楽の数多くのアーティストがカバーしていますね。後半にフィーチャーされるティンホイッスルとフィドルが印象的です。

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7. Dark Island
Iain McLachlanによって1958年に作曲された曲。親しみやすいメロディです。中盤リール風のダンスチューンのパートが挿入されています。

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8. Wild Goose Flaps Its Wings
Oldfieldのオリジナル曲ですが、彼の曲には珍しく、ブルース調のギターがフィーチャーされています。

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9. Flowers of the Forest
こちらも有名なトラッド曲。原曲はバグパイプで演奏されることが多いようですが、Oldfieldのアレンジによってリズミカルでドラマチックな曲に仕上げられています。終盤Oldfieldお得意の上昇を繰り返すシンセシーケンスが聴こえてきます。個人的にはアルバム収録曲では一番のお気に入りです。

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10. Mont St Michel
Oldfieldのクラシックギターとイーリアンパイプの演奏バックに、ロンドン交響楽団による演奏が壮麗に響くシンフォニー。やや安直に聴こえる他の曲とは一線を画しています。オーケストラアレンジはRobin Smithによるものです。曲の最後にさりげなくチューブラーベルが一発鳴っていますね。

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