ポータブルキーボードとは、家電量販店などでも販売されているキーボード(楽器)のことなのですが、メーカーとしてはYAMAHAとCASIOが有名ですよね。
1980年代のサンプリングのブームは、ポータブルキーボードの世界にも及んできていて、1985年にYAMAHAが、1986年にCASIOが相次いでサンプリング機能付きのポータブルキーボードを発売しました。
まずYAMAHAからVSS-100。これ、実は私が初めて買ったキーボードです。
https://www.yamaha.com/ja/about/innovation/collection/detail/2046/
FM音源の音色とリズムを内蔵したYAMAHA ポータサウンドの派生機種的な位置づけの製品で、ベーシックな機能に追加してボイスサンプリング機能(マイク or LINE IN)を持っていました。サンプリングした音でメロディを弾いたり、伴奏のベース音色としても使えました(使えたらしいです)。
そのサンプリングの性能ですが
・分解能:4bit
・サンプリング周波数:最大16kHz(サンプリング時間:4秒)
・4パートでのマルチサンプリングが可能
というものでした。
CDの分解能が16bit、サンプリング周波数が44.1kHzということからも分かるように、相当低スペックのサンプリング性能でした。なのできれいな音が再生できるわけでもなく、デジタルノイズが乗ったざらざらした音しか鳴らなかったように記憶しています。
でも、ポータブルキーボードの世界にサンプリングを持ち込んだという意味では、十分イノベーティブな製品だったと思います。
一方のCASIOは、1980年に「カシオトーン」ブランドでポータブルキーボード市場に参入し、YAMAHAの「ポータサウンド」と競合関係となってしのぎを削っていくことになるのですが、最初のサンプリング機能付きのキーボードは1986年に発売されたSK-1です。愛称は「サンプルトーン」という名称で大ヒット商品となりました。以下のURLのカシオのウェブサイトによれば累計100万台も売れたそうです。スゴイ!
SK-1のサンプリング機能ですが
・分解能:8bit
・サンプリング周波数:最大9.38kHz(サンプリング時間:1.4秒)
・サンプリング音のエンベロープ加工
・サンプリング音のループ処理
ということで、サンプリング時間は短いものの、分解能が8bitとYAMAHA VSS-100の16倍細かかったということで、VSS-100よりもきれいなサンプル音が録音できたようです。さらにサンプル音の加工も可能で、よりサンプラーの機能に接近した仕様となっていました。
さらに定価が16,000円と格安だったこともヒットの要因だったと思います。
https://web.casio.jp/emi/40th/history/sk-1.html
私はVSS-100を買ったのですが、正直 SK-1とどちらにしようか迷いました。選択の決め手だったのが鍵盤数(49鍵:SK-1は32鍵)と通常の音色の種類(21種類:SK-1は8種類)と同時発音数(9音:SK-1は4音)でした。サンプリング機能では残念な思いをしたのですが、どちらもMIDI機能が無かったキーボードだったので、たぶんどちらを買っていても、サンプリングを使いこなすことはできなかったんだろうなと思います。
YAMAHAのVSSシリーズも、CASIOのSKシリーズも後継機種は出たのですが、1990年前後になるとPCM音(サンプリングした楽器音)を利用したデジタルシンセや音源モジュールもかなり安くなってきて、DTMをやるうえではサンプリング機能の重要性はあまりなくなってきて、サンプリング機能付きのキーボードは姿を消していました。
でも最近のCasiotoneのラインナップにはサンプリング機能付きのキーボードがあるみたいですね。
ベンドホイールその他のコントローラも装備されている61鍵の標準鍵盤のキーボードで、実はちょっとそそられています・・・