Mike Oldfield アルバム紹介 その11:Islands

Mike Oldfield / Islands

1. Wind Chimes (Part One and Part Two)
2. Islands
3. Flyng Start
4. North Point
5. Magic Touch
6. The Time Has Come
7. When The Nights on Fire

 

1987年に発表された Mike Oldfield の3年振りのアルバムは、22分に及ぶ大作1曲と6曲(アナログ盤は5曲)のヴォーカル曲という、アルバム Crises などと同じ曲構成の作品集となりました。また、Virgin Records Americaの設立に合わせて、曲順を変更したUS盤もリリースされました。

まず、1曲目に収録された大作の「Wind Chimes」ですが、過去のOldfieldの作品とは少し印象が異なります。

曲中に、Oldfieldが休養期間中に訪れたバリ島の楽器やケチャ等のサンプリング音を多用しているという点もありますが、従来の作品と比較すると、よりクラシック音楽のシンフォニーを意識したようなサウンドになっているように思えます。当時のOldfieldのメインの作曲ツールであった Fairlight Series IIIのサンプリング音質向上によって、ストリングスなどのサウンドもリアルに再現できるようになったこともあり、シンフォニーを意識した作りにしたんじゃないかと推察しています。

ただ、それに伴ってOldfieldが演奏するエレクトリックギターの出番が少なくなっており、私のような過去のOldfieldのサウンドが好きな人にとってはちょっと違和感がある感じでしたが、言い換えるとより大衆に受け入れやすいサウンドに変化したとも言え、是非はつけがたいですが、Oldfieldとしては新たなチャレンジであったと思います。

この曲は、前作 Discovery から引き続きSimon Phillipsとの共同プロデュースとなっていて、Phillipsのタイトなドラミングはこの曲でも聴くことができます。

 

ところでこのアルバムですが、YouTubeMike Oldfieldのチャンネルには、なぜかこのアルバムだけ音源が無く、サブスク(Apple Music)にもカタログが無い状況になっています。理由は分かりませんが、仕方が無いのでアルバム音源を丸ごとアップしている動画を参考に貼っておきます。

www.youtube.com

 

後半6曲は、様々なヴォーカリスト、プロデューサーとの共同作業によるポップソング集になっています。

「Islands」
 Vocal:Bonnie Tyler
 Produce:Mike Oldfield, Tom Newman and Alan Shacklock

タイトルトラックとなる曲でヨーロッパでシングルカットされました。イントロのオーボエはAndy Mackay、後半のサックスは Raf Ravenscroftによる演奏です。

www.youtube.com

「Flying Start」
 Vocal:Kevin Ayers
 Produce:Mike Oldfield

Oldfieldがソロデビュー前にメンバーとして参加していたバンド The Whole World のリーダー Kevin Ayersがヴォーカルを務めるのんびりとした雰囲気の曲。歌詞にも"the whole world"という言葉が出てきます。

「North Point」
 Vocal:Anita Hegerland
 Produce:Mike Oldfield

Anita Hegerlandは1985年のOldfieldのシングル「Pictures in the Dark」でヴォーカルとして参加して、引き続きOldfieldの作品に参加することになりました。この頃はOldfieldのガールフレンドだったようで、幻想的なサウンドでバックアップしています。

「Magic Touch」
 Vocal:Jim Price (US盤はMax Bacon)
 Produce:Mike Oldfield and Geoffrey Downes

Max BaconはSteve HoweとSteve Hackettが結成したバンドGTRのヴォーカリストとしても知られていて、1986年のGTRのアルバムに参加しています。1987年の Islands のリリース時点では、BaconはまだGTRが契約していたアメリカのArista Recordsとの契約が残っていたため、ヨーロッパ盤では代役としてイギリスのミュージシャン Jim Priceがヴォーカルとして起用されています。この曲は、GTRにもプロデューサーとして参加していたAsiaのキーボーディスト Geoffrey Downesとの共同プロデュースということで、本来はMax Baconのバージョンがメインだったのだろうと想像します。US盤のアルバム(1988年リリース)ではBaconがヴォーカルを取っていて、MVもBaconバージョンです。シングルはアメリカでもリリースされました。

www.youtube.com

「The Time Has Come」
 Vocal:Anita Hegerland
 Produce:Mike Oldfield and Michael Cretu

この曲は、後にユニットEnigmaを結成して人気を得ることとなる、ドイツのミュージシャンMichael Cretuとの共同プロデュース。この時点ではCretuのほうがOldfieldのスタジオワークを勉強する立場だったようです。

Oldfieldのギター以外はほぼ打ち込み?のようなサウンド。この曲はヨーロッパでシングルとしてリリースされています。

「When The Night's On Fire」
 Vocal:Anita Hegerland
 Produce:Mike Oldfield

この曲は、アナログ盤とUS盤には収録されていないのですが、個人的にはこの曲がこのアルバムのベストトラックです。タイトルトラックである「Islands」の変奏になっていて、メロディや歌詞の一部が「Islands」と同じものが使用されています。聴きどころは3分ごろから始まるOldfieldのギターソロ。ギターソロがあまりフィーチャーされないこのアルバムにおいて最も印象的なパートだと思います。

www.youtube.com

Marillion 「Beautiful」

イギリスでは現在も安定した人気を誇るロックバンド Marillion が1995年にリリースしたアルバム Afraid of Sunlight に収録された、美しいメロディとシンプルなメッセージが素敵な曲です。

www.youtube.com

ビデオクリップも制作されています。

www.youtube.com

 

Marillion / Afraid of Sunlight

 

Marillionの音楽性というのは、初期はポンプロックなどと言われ、Genesisに影響を受けたプログレッシブロックの要素を持ったサウンドでしたが、本質としてはオーソドックスなブリティッシュロックバンドです。コンセプトアルバムや演奏時間が長い曲でも、奇をてらったようなアレンジの作品を作るわけでなく、丁寧に重厚なサウンドを作り上げていて、安心して聴けるというところが長い期間活動を続けられる秘訣なのだろうと思います。

あとは歌詞。プログレバンドにありがちな難解な内容や、お伽噺のような内容は避け、多くの曲で現実社会に向けたメッセージを書いている点が、リスナーに受け入れられているのではないかと考えます。(事実、彼らの最新アルバム An Hour Before It's Dark もイギリスのチャートで2位を記録したとのことで、ある意味国民的バンド的立ち位置なんですね・・・)

この曲「Beautiful」も「この世界は誰もが美しく、蔑まれるようなことはない。本当に美しいものが見極められるような世界にしよう」というメッセージが込められています。(以下の歌詞はMarillionのオフィシャルウエブサイトから引用)

Everybody knows we live in a world
Where they give bad names to beautiful things
Everybody knows we live in a world
Where we don’t give beautiful things a second glance

Heaven only knows we live in a world
Where what we call beautiful is just something on sale
People laughing behind their hands
While the fragile and the sensitive are given no chance

And the leaves turn from red to brown
To be trodden down
To be trodden down
And the leaves turn from red to brown
Fall to the ground
Fall to the ground

We don’t have to live in a world
Where we give bad names to beautiful things
We should live in a beautiful world
We should give beautiful a second chance

And the leaves fall from red to brown
To be trodden down
To be trodden down
And the leaves turn green to red to brown
Fall to the ground
And get kicked around

You strong enough to be
Have you the faith to be
Honest enough to stay
Don’t have to be the same
Don’t have to be this way
C’mon and sign your name
You wild enough to remain beautiful?
Beautiful

And the leaves turn from red to brown
To be trodden down
Trodden down
And we all fall green to red to brown
Fall to the ground
But we can turn it around

You strong enough to be
Why don’t you stand up and say
Give yourself a break
They’ll laugh at you anyway
So why don’t you stand up and be
Beautiful
Black, white, red, gold, and brown
We’re stuck in this world
Nowhere to go
Turnin’ around
What are you so afraid of?
Show us what you’re made of
Be yourself and be beautiful
Beautiful

キーボードソロがある曲(その9):寺尾紗穂「魔法みたいに」

ピアノ弾き語りの間奏というのは、キーボードソロと呼んでいいのかな?と思いながら聴いていました。

寺尾紗穂さんの「魔法みたいに」。2007年のシングル「さよならの歌」のC/W曲ですが、現在、NHKのドキュメンタリー番組「Dear にっぽん」のテーマソングとして(一部歌詞を変更して)採用されています。私もこの番組を見てこの曲を知りました。

寺尾紗穂 / さよならの歌

 

www.youtube.com

ピアノとパーカッションという最小限の構成による演奏、シンプルなメロディと歌詞、そして芯の通った歌声が1970年代のシンガーソングライターの佇まいを醸し出していてとても印象的です。

1分20秒あたりから始まる16小節、約40秒のピアノソロも味があっていい感じ。後半はホルンの音色が控えめに味付けしてます。

アルバム 風はびゅうびゅう に収録されたバージョンは、上記のピアノソロ部分にクラリネット(?)の演奏がかぶせられていますが、個人的にはシングルバージョンのほうが好きです。よりシンプルなほうがこの歌の魅力が伝わると思います。

ところで、寺尾紗穂さんは新作 余白のメロディ を6月22日にリリースしています。サブスクでも聴けるようなので少し聴き入ってみようかなと思っています。

らしいといえばらしい:Jon Anderson 「Olympia」

YES(あ、元YESかな)のヴォーカル、 Jon Anderson が1982年に発表したアルバム Animation の1曲目に収録されているのがこの曲。

www.youtube.com

私はこのアルバムをアナログ盤で持っていたのですが、輸入盤だったので歌詞が記載されていませんでした。なのでタイトルが「Olympia」というだけあって、何やらギリシャ神話などに関係する歌なのかなとずっと思っていましたが、リイシューされたCDのブックレットと歌詞を改めて読んでみると全然違う内容でした・・・。

Olympiaというのはロンドンにあるイベント会場で、そこで開催された"music trade show"を訪れたAndersonが当時最新のオーディオプロセッサ製品(当時のことなのでラジオ関連技術がメイン)を見て、これにインスピレーションを得た曲のようです。曲中にはラジオのチューニング音やラジオ放送の一部がサウンドエフェクトとして使用されています。

また、歌詞にはEventideというオーディオプロセッサメーカーの名前や、Sharp、Sanyo、Sonyといった日本のオーディオメーカー、あとカシオの名前も出てきます。(当時の日本企業の勢いを感じますね・・・)

まあ、こんなことを無邪気に曲にしてしまうところは、Jon Anderson らしいといえばらしいですね。

演奏は、ギターにClem Clemson、ベースにStefano Cerri、ドラムはSimon Phillips、キーボードはDavid Sanciousという面々によるもの。この曲ではClem Clemsonが溌剌としたギタープレイを披露しています。Simon Phillipsは翌年、Mike Oldfieldのアルバム Crisesに参加しますが、Andersonもこのアルバムで1曲歌っているということは、Phillipsを介してつながりがあったのかも知れません。

ちなみにアルバムタイトルの Animation とは、日本人がイメージする「アニメ」ではなく、「活気」という意味です。タイトルトラック「Animation」では"Animation of Life"という歌詞も出てきますが、この曲は、Andersonの娘の誕生という出来事から生まれた曲とのこと。アルバム全体も活気にあふれた曲が多く収録されていて個人的にもお気に入りの作品です。

Jon Anderson / Animation

 

<Olympia>

What you want, you say you
You gonna get it easy
What you need, say really
Electronic digit!

Scientific sell me
So terrific to do
Counting fifty-two, plus micro-chip
Plus you're so serious

Eventide delay
Eventide delay

Anytime you meet superstition
Just add thoughts to advision
Then cross collateralize and
Subsidized by television

Media media, work to ninety-five
Set to stabilize,
mark one plus two eighty five

Olympia

Just listen watch
And watch more closely now 
Such new machines self-loading
Acquire a taste for you
Spells the name remains the same
Shouts of prophet laughter
Set to spellbind you the viewer
To view the voyager.

Eventide delay
Digital delay
Monitor special moments
That turn to history
The sound can bring you
Whatever you need

Attention attention
Within the groove

Sharp sophistication
Computer Casio overdrive

Olympia

Through these hallowed halls
Sing into these ears
Songs of infinite
My child media

What you want, electronic music
What you have, such symphonic music

Sanyo, Sony, power multiply by hour
Computer redesign?
Riding out in scale of nine

Eventide delay
Digital delay
Anytime you need the truth
Tune in and turn the key
True media media media
You know you've got to me!!

Kate Walsh 「Talk of the Town」

以前、イギリスのシンガーソングライターKate Walshの作品についてこんな記事を書きました。

moonshineplus.hatenablog.com

Kate Walshの2ndアルバム Tim's House は、2007年にUKのiTunes Storeのチャートでトップとなったことが話題となった彼女の作品の中では最も有名なアルバムです。

Kate Walsh / Tim’s House

このアルバムに収録された「Your Song」がヒットしたことで、一躍脚光を浴びたKateさんですが、私も同様にこの曲でこのアーティストを知りました。でもアルバムを聴いて一番気に入ったのは、この「Talk of the Town」です。

www.youtube.com

メランコリックな歌詞に、ゆったりとした抜群に美しい3拍子のメロディと、Kateさんの甘いヴォーカルが心に残る曲です。伴奏はアコースティックギターとドラムとベースによるシンプルな構成でヴォーカルをサポートしています。

"talk of the town"とは「町のうわさ」という意味らしく、イギリスの小さな町での出来事、ちょうどアルバムジャケット写真にあるようなレンガ造りの家が並ぶ町を想像したりします。

ところで、レコーディングはイングランド南海岸に位置する街Brightonにある、プロデューサーのTim Bidwellのホームスタジオで行われたとクレジットされていて、アルバムタイトルの"Tim's House"もこれに由来しています。なのでアルバムのカバ―アートもBrightonで撮影されたのかなと勝手に思っているのですが、BrightonをGoogle Mapで調べたところ、観覧車もあるような観光地のようなので、ちょっとイメージが違っていました・・・。

ちなみに、Tim Bidwellのホームスタジオは現在「Clockwork Owl Studio」という名称になっているようです。

https://www.clockworkowlstudio.com/

好きなインスト曲:King Crimson 「Sailor’s Tale」

King Crimsonのインスト曲というのは、「Red」や「Larks' Tongues in Aspic, Part II」のようなしっかり構築された曲は好きなのですが、インプロヴィゼーション(即興演奏)がかっているものについては正直なところ私は苦手です。でもこの曲は、即興っぽい部分があるのですが、なぜか好きなんです。中盤から後半に向けて怒涛のように盛り上がっていくところがいいんですね。

1971年のアルバム Islands から「Sailor’s Tale」

King Crimson / Islands

 

前半は、一定のパターンを刻むリズム体に乗せて、Mel Colinsのサックスが中心となった演奏、いったんブレークの後、中盤はRobert Frippのザラっとした音色のギターによるインプロヴィゼーション、と、ここまでならあまり好きになれなかったかもしれませんが、4分30秒あたりから、最初のリズムが戻ってくるととともにメロトロンが音の壁を構築して、一気にクライマックスへ向かう展開が気持ちいいです。最後、フレットを移動させながらかき鳴らすギターだけになって締めくくるところもかっこいいです。

 

www.youtube.com

 

サウンドの透明感:Suzanne Vega 「Cracking」

1980年代の前半は、購入したレコードについて手書きのリストを作っていて、今でも何故か持ってます。

それを見ると、Suzanne Vegaの1985年リリースのデビューアルバムを買ったのは1986年の春頃で、ちょうどその頃、The Dream AcademyやAztec CameraClannadなどのアコースティック主体のサウンドに興味を持ち始めていたのが、このアルバムを買うきっかけになったように思います。それと名前の"Vega"という響きが良かったということもあったのかも知れません。

Suzanne Vega / Suzanne Vega

この曲「Cracking」は、デビューアルバム1曲目に収録された曲で、いわゆる「名刺代わり」という位置づけの曲ですが、ドラムレスのいたってシンプルでアコースティックな曲で、目立つ曲ではありません。でも私はこの曲、好きなんですね。

爪弾かれるアコースティックギターとクリーンなエレクトリックギターの音の隙間を埋めるようにシンセ音が控えめに配置されたサウンドの透明感が素敵で、Suzanneのつぶやくようなヴォーカルとともに、静寂とした情景を思い浮かべることができます。

www.youtube.com

Suzanne Vegaは次作アルバム Solitude Standing とシングル「Luka」、「Tom's Diner」がヒットして一躍人気アーティストになりますが、個人的にはこの1stアルバムのほうが愛聴盤です。