Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

Matching Mole 「O'Caroline」

人名がタイトルになっている曲ということで、久しぶりにこの曲を聴いてみました。

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Matching Moleのセルフタイトルのアルバムに収録された「O’Caroline」。Soft Machineのメンバーだった Robert Wyatt が Caravanのメンバーだった David Sinclair らと結成したバンドがこのMatching Moleで、この曲は、1972年リリースのアルバムの1曲目に収録されました。

フォーキーな雰囲気で素朴なメロディとそれに歌詞をのせて歌うWyattのヴォーカルが魅力的な曲。歌詞は当時のWyattのガールフレンドだったCaroline Coonへ向けた歌だそうです。曲の中でフルートやストリングスの音色で聴こえるのはメロトロンの音ですね。

曲の最後は上の動画ではブツっと切れていますが、これは次の曲にシームレスで繫がっているため。1970年代初期のプログレッシヴロックではこういった構成になっているアルバムが多いです。

シングル用にエディットされたバージョンがこちらのようです。

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アルバム全体としてはこのようなフォーキーな曲はこれだけで、他の曲はほとんどインストでジャズロックの要素が濃いサウンドになっているので、この曲のテイストを期待すると肩透かしかもしれません。

Macthing Mole / Matching Mole

Jon And Vangelis 「Deborah」

特に統計を取って検証したわけではないですが、洋楽には人名を曲名にしている曲が多いような気がします。前回紹介したフリートウッド・マックの「Sara」は女性の名前で、スティーヴィー・ニックスの友人をテーマにした曲なのですが、それ以外にもTotoの「Rosanna」、The Knackの「My Sharona」、Michael Jacksonの「Billie Jean」、Boz Scaggsの「Jojo」、Kim Carnesの「Bette Davis Eyes」、Bostonの「Amanda」といった人名がタイトルとなっているヒット曲が数多くあります(古い曲ばっかりでスミマセン、最近の曲は知らないので・・・)。

一方、日本の曲には人名がタイトルとなっている曲はかなり少ないと思います。日本人の名前を曲名につけてもあんまりカッコよくない(曲名にするにしてもニックネームにする)というのがあるのと、直接的に名前を呼びかけるような文化じゃないというのも理由としてはあると思います。

 

余談はさておいて、今回紹介するのはYesのヴォーカリストJon Andersonとシンセサイザー奏者 Vangelisによるユニット Jon And Vangelis の「Deborah」という曲。DeborahはJon Andersonの娘で、Andersonが娘 Deborahに宛てて書いた手紙を歌詞にしたのがこの曲のようです。Deborahはこの曲がリリースされた時期は12歳くらいで、思春期に入り始めた娘に対してこのような歌を臆さず歌うというのは(親バカ)、日本では考えにくいですね。

 

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AndersonのハイトーンヴォイスとVangelisのピアノとシンセによるロマンチックなオーケストレーションが美しい曲。歌の最後にヴォコーダーでコーラスを入れているのが時代を感じさせますね。

1983年のアルバム Private Collection に収録されています。

これはアナログ盤のジャケットデザイン。

Fleetwood Mac 「Sara」

「Sara」は1979年のFleetwood Mac のアルバム Tusk に収録された曲。作詞曲とリードヴォーカルは Stevie Nicks が担当しています。シングルカットされてヒットもしました。個人的には Fleetwood MacでのNicksのヴォーカル曲では一番好きな曲。

アルバム収録バージョンは6分半ほどあるのですが、曲構成としては比較的シンプルでリズムもトリッキーなところは無く、Nicksのヴォーカルも淡々と歌っている感じで、ちょっと単調なように感じるかもしれません。もちろんNickの存在感はバンドの中でも際立っていて、その憂いのある声も魅力的なのですが、この曲で私が好きなところは、ヴォーカルのエコーとリヴァーブ処理、そして背後に霞のように配置されたバッキングヴォイスで、このサウンドメイクがこの曲の神秘的で幻想的なイメージを作り上げているように思います。

ちょっと10ccの「I'm Not In Love」のサウンドとの類似点も見出せそうな気もする、レコーディングによる音響効果の魅力が詰まった曲です。

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こちらはライブ演奏でのヴィデオクリップで、テンポが速いのもありますが、スタジオ録音版とは若干イメージが違いますね。

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Fleetwood Mac / Tusk

キーボードソロがある曲(その26):Eric Carmen 「All By Myself」

シンガーソングライター Eric Carmen の代表曲「All By Myself」。シングルとしてリリースされた1975年のヒット曲で、ロマンチックなピアノのメロディとナイーブな歌詞が印象的なパワーバラードです。1996年にはセリーヌ・ディオンがカバーして、こちらもヒットしましたね(このカバーはちょっと過剰演出気味で個人的にはイマイチですが)。

まずはシングルバージョンから。

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シングルバージョンは4分半ほどの長さですが、彼のソロデビューアルバム Eric Carmenに収緑されたバージョンは約7分と長尺の演奏時間となっています。

これはアルバムバージョンの中間部に挿入されたピアノソロの有無の違いによるものなのですが、Wikipediaによれば、この曲はこの間奏部から作られたらしいです。そしてこのロマンチックなメロディの間奏部に似合うヴォーカルパートのメロディとして参照したのがラフマニノフピアノ協奏曲第2番の第2楽章でした。ヴァース部分はほぼまるごと拝借しているので、現在はこの曲の作曲者はカルメンラフマニノフとなっています。

幼少の頃からクラシック音楽とヴァイオリン、そしてピアノに親しんだというCarmenは、この曲でもピアノを披露しており、間奏部のピアノ協奏曲風のパート(この部分はCarmen自身の作曲)でも美しいピアノ演奏を聴かせてくれています。

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ラフマニノフピアノ協奏曲第2番の第2楽章は、YouTubeでも多くの演奏を聴けるのですが、今回はこちらから。
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)とボストン・シンフォニー・オーケストラの演奏で、指揮は先日逝去された小澤征爾さんです。

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そのEric Carmenさんも先日お亡くなりになったとのこと。でもこの曲は今後も歌い継がれるエバーグリーンな名曲だと思います。R.I.P.

 

Eric Carmen / Eric Carmen

Yes 「Changes」

1983年に復活して「Owner Of A Lonely Heart」が世界的な大ヒットとなったYesですが、この復活の立役者はプロデューサーのTrevor Hornと、新たにバンドに加入したソングライターであり、ギタリスト兼マルチ奏者のTrevor Rabinの2人です。

過去の作品からの大きなサウンドの変化から古いファンからは賛否両論あった(でも一般にはウケた)アルバム 90125 に収録されていたのがこの曲「Changes」。アルバムでのクレジットは Trevor Rabin と Jon Anderson とAlan Whiteの共作となっていますが、ベースとなったのはTrevor Rabin作のデモ曲でした。

 

Rabinは後にYes在籍時代のデモ音源をまとめたアルバム 90124 を発表していますが、その中に「Changes」のデモ曲が収録されています。

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Yesはこのような個人のマテリアルを元にして、メンバー達がアレンジを加えて曲を発展させていくという制作手法を昔から行っています。時にはあまりいじくりすぎてオリジナルの良さが無くなってしまう例(「Into The Lens」など)もあるのですが、この曲はRabinのデモをベースに、よりテクニカルでスリリングな曲へと進化させることに成功していると思います。

 

デモ曲には無かった冒頭約75秒間のイントロはAlan Whiteのアイディアがメインかと思われます。マリンバによる変拍子のリズムに畳みかけるようなドラム、そして切り裂くようなギターといったテクニカルな演奏がめっちゃカッコイイ。ポップになったと言われるアルバムですが、イエスらしい要素も上手く残しているところはプロデューサーのTrevor Hornのセンスでしょうか。続くヴォーカルパートは前半はデモ曲をなぞったものになりますが、後半部はAndesonのソロパートが入るなど大きくアレンジしていて特にハイトーンのコーラスが際立っています。

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エンディングのキメもかっこいいです。個人的にはアルバム 90125 の中で一番好きな曲です。

 

Yes / 90125

Steve Hackett 「Spectral Mornings」

Steve Hackettの1979年発表のアルバム Spectral Mornings のタイトルトラック。Hackettの代表的なインストルメンタル曲として知られていますが、最初はヴォーカル曲として作曲したものだそうで、Hackettがメンバーにヴォーカルのメロディをギターで披露したところ、当時ヴォーカル担当のPete Hicksが「ギターバージョンのままの方がいい」と言ったことからインストルメンタル曲としてレコーディングしたとのこと。確かに<ヴァース/コーラス>の繰り返しで構成されるヴォーカル曲であってもおかしくない構成になっていると思います。

ここでのHackettのギター演奏は、時折テクニカルな部分はあるもののロングトーンをメインとしたロマンチックで美しいメロディを奏でていて、さらにNick Magnusのストリングス系シンセやノヴァトロンによる分厚いバッキングとともに夢の中のような音空間を作り上げています。個人的にも大好きな曲。

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Steve Hackett / Spectral Mornings

 

これは2019年のライブ映像のようです。曲の最後ではタッピングによるフレーズも鳴らしています。

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もう一つ、これはカバ―バージョンですが、イギリスのプログレッシヴロックバンド MagentaのリーダーであるRob Reedが2015年に企画したEP「Spectral Mornings」に収録された曲です。ヴォーカル曲としてアレンジされていて、ヴォーカルはMagentaのChristina BoothとBig Big TrainのDavid Longdonが担当しています。Steve Hackett本人も曲後半でエレクトリックギターで参加しています。

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Genesis 「Duke's Travels ~ Duke's End」

前回紹介したスーパートランプのアルバム Breakfast In Americaアメリカでヒットしていた1979年頃、同様にサウンドをポップ化してアメリカ進出を図っていたジェネシスと比較して語られたことがあったようです。どちらもプログレッシヴロックが原点にあるバンドで、音楽的には大きく異なっていると思うものの、上手くポップ化を成し遂げたという意味では共通点があるのでそのような比較が行われたのかなと思います。

 

そんな時期のGenesisが1980年にリリースしたアルバムが Duke 。「Turn It On Again」や「Misunderstanding」といった曲をアメリカでヒットさせ、アメリカのポップフィールドに大きく躍進したアルバムです。

Genesis / Duke

 

アナログのLPレコードでは標準的な収録時間は片面20分(両面で40分)と言われている(さらに収録時間が長くなると音質が悪化する)中で、Genesisのアルバムはこれを大きく上回る50分以上を収録するものが多く、本作Duke もトータル55分を超えるアルバムとなっています。

収録曲は12曲で、冒頭3曲と最後の2曲はそれぞれがメドレー形式で構成されていて他の7曲を挟み込むような構成となっています。(上記の5曲と中間の「Turn It On Again」を合わせて「Duke Suite (The Story of Albert)」と呼ばれることもあるようです。

 

Duke's Travels」と「Duke's End」はアルバム最後を飾るメドレー。ほとんどがインストパートとなっているこの曲で大きくフィーチャーされているのはPhil Collinsの手数の多いドラムとTony Banksの音の粒が降り注ぐような華麗なキーボードプレイで、躍動感とシンフォニック感が共存する非常にカッコイイ曲になっていると思います。トータル11分にもおよぶ長い曲ですが、全くだれることなく聴くことができます。個人的にはGenesisの曲の中で一番好きな曲。

 

YouTubeで公開されているオフィシャルの音源は2曲に分かれてしまっていますが、この2曲のつなぎの部分もめっちゃカッコイイのでぜひ連続で聴いてほしいです。

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