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Mike Oldfield アルバム紹介 その26:Return To Ommadawn

2015年10月にFacebookに書き込まれたMike Oldfieldのメッセージによれば、以下のようなことをうかがい知ることができました。

・「New Ommadawn」のアイディアに着手していること
・それは、すべての楽器を自身で演奏する作品になること
・制作中の作品は何かの続編ではなく、全くの新作になるかもしれないこと

そして、2016年4月にはその作品が「Return To Ommadawn」というタイトルになることが明かされています。(掲載元:https://tubular.net/

Oldfieldは、2014年リリースの前作 Man On The Rocks 発表後、リイシューシリーズの一つ Discovery のリミックスなどを手掛けており、バハマで半隠居生活をしつつも再び音楽活動が盛んになってきた時期だったようです。

でも一方でこの期間に、息子と父親を相次いで失うという不幸があり、また2016年末にはバハマ諸島を襲ったハリケーンにより、自宅スタジオの機能が停止する事態に見舞われたこともありアルバム完成は遅れ、ようやく2017年1月にOldfieldの最新作 Return To Ommadawmがリリースされました。

 

Mike Oldfield / Return To Ommadawn

Return To Ommadawn  Part I
Return To Ommadawn  Part II

 

過去、Oldfieldはデビュー作 Tubular Bells に対して、Tubular Bells IITubular Bells IIIといったバリエーションを作ってきました。この Return To Ommadawm も、オリジナルであるOmmadawnを想起させるような展開がみられる作品にはなっていますが、Tubular Bellsシリーズのような明確な類似性はみられません。紡ぎ出すサウンドはよりアコースティック色が強くなり、Ommadawnのような浮遊感や高揚感を得られる濃密でドラマチックな曲というよりは、枯れた哀愁のただようメロディを前面に押し出した薄味のものとなっています。

Ommadawnとの共通部分と言えるPart I 後半のアフリカンドラムのパートやPart IIエンディング部の「On Horseback」に相当するパートもどこか「取って付けた」ようなイメージを抱いてしまうところが個人的にはマイナス要素です。おそらく最初に書いたように、「New Ommadawn」として制作を始めたものの別の作品にすることも考えていたという点が起因していそうです。最終的にはOmmadawnのフォーマットに合わせたものの、実はOmmadawn的な要素は少なかったのではないかと思えて仕方ありません。アルバムタイトルも「Ommadawn II」ではなく「Return To Ommadawn (オマドーンへの帰還)」としたのもそういう理由があったのではないか、と勝手に勘ぐっています。

とはいえ、全編で綴られるOldfiledらしい優しいメロディと職人気質漂うギター演奏は素晴らしいものだと思います。Part I、IIそれぞれ約21分から構成される彼の初期作品群を彷彿させる本作は、初期作品群のサウンドに込められた魔法のようなパワーには及ばないものの、長さを感じさせることなく聴くことができる良作といえます。

本国イギリスではアルバムチャートの4位がピークだったようで、一般リスナーにも広く受け入れられた作品となっています。

 

www.youtube.com

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曲中の楽器(アコースティックギター、エレクトリックギター、ベース、キーボード、パーカッション、ホイッスル等)はすべて、コンピューターによる演奏を排除したMike Oldfield自身の生演奏らしく、本アルバムを録音するために新たに購入したものも多かったそうです。ただし、Part I 後半部のコーラス(Clodagh Simmondsの声)とPart II最後の子供たちの合唱は、オリジナル Ommadawn の録音をサンプリング・加工したものとなっていて、たぶんその点が個人的には違和感がある部分なんだと思います。

 

そして、本作発売の頃にはすでに次作として構想していた「Tubular Bells 4」に着手していたらしいのですが、結局完成品として陽の目をみることはなく、この Return To OmmadawnMike Oldfield最後のオリジナル作品となりそうです。

ということで、昨年の1月から始めた「Mike Oldfield のアルバム紹介」もこれで一区切りとなりますが、まだ書けていないビデオ作品やコンピレーション作品などもありそうなのでそれはまた番外編として別の機会に・・・。