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Mike Oldfield アルバム紹介 その16:The Songs Of Distant Earth

アルバム Tubular Bells II のリリースの後、エジンバラ城でのプレミアコンサートを皮切りに、翌年1993年9月まで「Tubular Bells II 20th Anniversary Tour」と題したコンサートツアーを行ったMike Oldfieldが、次作の題材として取り上げたのは「SF」。それもArthur C. Clarkeによる宇宙を舞台にした小説「The Songs of Distant Earth (邦題:遥かなる地球の歌)」でした。

1994年11月にリリースされたこのアルバムは、イギリスでは、前作ほどではないもののアルバムチャートの最高24位まで上昇しました。そのときのアルバムジャケットはこちら。

Mike Oldfield / The Songs of Distant Earth

その後、CD-ROMトラックを追加してリイシューされたものはこちらです。ジャケットデザインはオリジナル版のほうが好きなんですが、いまではこちらが普及しているようですね。

<トラックリスト>

1. In The Beggining
2. Let There Be Light
3. Supernova
4. Magellan
5. First Landing
6. Oceania
7. Only Time Will Tell
8. Prayer For The Earth
9. Lament For Atlantis
10. The Chamber
11. Hibernaculum
12. Tubular World
13. The Shining Ones
14. Crystal Clear
15. The Sunken Forest
16. Ascension
17. A New beggining

 

全17曲のほとんどがシームレスで繋がっている構成は、前作 Tubular Bells II と同様で、約56分間のインストルメンタル組曲となっています。トラックは17ありますが、1~2分程度の短いトラックも7~8あって、これらは前後のトラックの橋渡し的な役割を果しています。

当時のOldfieldのインタビュー記事を読んでみると、SFをテーマとしただけあって、アコースティック楽器をほとんど使用せず、エレクトリックギターとシンセ、サンプラーとコンピューターで制作されたようです。ほんの数年前まで「コンピューター音楽は魂のない音楽と呼べないようなものだ」と言っていたのは何だったんだという感じなのですが、コンピューターや電子楽器の機能・性能向上に伴って、それらが音楽制作に重要なツールであるということを理解したのかもしれません。過去にもいちはやくFairlightを導入したりと、基本的に新しモノ好きな(でも飽きやすい)性格というのもあるとは思います。

この作品、リズムは打ち込みとなっているのですが、ロック的なドラムではなく、アンビエント系のドラムループを使っていて、そこが過去の作品と大きく印象が異なる部分だと思います。このへんは好みの分かれるところで、個人的には最初は拒否反応が強かったのですが、次第にこの作品は、刺激的なものを期待するのではなく、Oldfieldらしい素朴なメロディをゆったり楽しむ系の作品だということが判ってきました。

 

作品の性格上、17のトラックを小分けに紹介する感じではないので、ポイントを絞ります。

1. In The Beggining
2. Let There Be Light
このアルバムの主題となるメロディが提示されるパートです。リズムループとギターとシンセとSE、そして断片的なセリフとスキャットというこのアルバムの主要な音楽要素を感じることができる曲です。シングルとしてもリリースされました。

www.youtube.com3. Supernova
4. Magellan
前トラックの最後のドラムロールから一気にアップテンポとなり盛り上がる部分。バグパイプ風の音色が印象的です。中盤以降はテンポを落としてピアノとギターによる演奏となります。

www.youtube.com5. First Landing
6. Oceania
7. Only Time Will Tell
ヴォーカル、クワイヤー、スキャットなど人の声をメインにフィーチャーしたパート。2分10秒頃から背後で聴こえる上昇するシンセシーケンスは、Incantationsでも使用されたOldfieldお得意のサウンドですね。

www.youtube.com8. Prayer For The Earth
9. Lament For Atlantis
アルバム前半部分を締めくくる部分。Tr. 4「Magellan」の前半部分のメロディをピアノでなぞっていきます。

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10. The Chamber
11. Hibernaculum
このトラックもシングルカットされました。ドラムループに男声のチャントというのが当時人気のあったEnigma風ではありますが、Oldfieldは以前からEnigmaのMichael Cretuとは交流があったので意識した部分があったのかもしれません。

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12. Tubular World
"Enter"というセリフで始まるのは、Tubular Bells冒頭のフレーズに似たメロディ。それで「Tubular World」というトラック名ということなんでしょう。その後ダンスビートになっていく展開は、今聴くとその後の作品となる Tubular Bells III にも繋がっていくのかなと思ったりもします。

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13. The Shining Ones
14. Crystal Clear
ここでのOldfieldのギターは非常に「歌って」いて好きなパートです。

www.youtube.com15. The Sunken Forest
16. Ascension
アルバムのクライマックス部分。これまで登場したいくつかのメロディがリフレインして奏でられます。

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17. A New beggining

 

この時期のOldfieldは、再びCGによる映像作品にハマっていたようで、リイシュー盤のCD-ROMトラックに当時作っていた作品の一部が収録されていたそうです。ただしMac専用のファイルだったため、Macユーザしか観ることはできませんでした。(今ではYouTubeにアップされて観ることができるようです)

これらCG作品は正式にリリースするつもりだったようですが、どうやら途中で頓挫したみたいです。でもシングルカットされた「Let There Be Light」と「Hibernaculum」のビデオクリップではこのCG映像の一部を観ることができます。(こちらもYouTubeで検索すれば出てきます)