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Mike Oldfield アルバム紹介 その24:Music of The Spheres

前作 Light + Shade では、エレクトロニックサウンドにヴォーカロイドという生楽器を極力排したアルバム制作を行った Mike Oldfield でしたが、それ以降そのような作品を作らなくなりました。思ったほどリスナーの支持が得られなかったというのもあると想像しますが、彼の性格からしてチルアウト路線に飽きたんじゃないかとも思います。

そこで次にOldfieldが目指したのが、過去にも部分的に自己のアルバムで取り上げてきたオーケストラ作品です。

Mike Oldfield / Music of the Spheres

 

過去にもと書きましたが、例を挙げると、古くはロックとオーケストラの融合を図った Incantations、映画のサウンドトラックで一部のトラックをDavid Bedford が編曲したアルバム The Killing Fields 、アルバム Voyager に収録の「Mont St Michel」、そしてミレニアムイベントで演奏された「Berlin 2000」などが挙げられます。しかしアルバム全体をオーケストラの演奏を目的として制作したのはこの作品が初めてです。
(デビュー作 Tubular Bells を David Bedford が編曲して制作した アルバム The Orchestral Tubular Bells というのもありますが、こちらは厳密にはオーケストラでのカバーバージョンですね。)

 

2008年にリリースされたこのアルバム Music of the Spheres(邦題:天空の音楽)のプロデュースは、Miike Oldfield と Karl Jenkins によるもの。Karl Jenkinsは元Soft Machineのメンバーで、1990年代には、Miriam Stockleyをはじめとする女性コーラスをフィーチャーしたユニット Adiemus をサウンドを担当し、オーケストラの編曲にも長けたミュージシャンです。

アルバム制作は、まずOldfieldがコンピュータでデモ音源と譜面を作成し、Jenkinsがこれをアレンジするという形で行われたようです。このデモ制作の音源が「Spheres」としてシングル化されています。

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これを聴くと、この時期のOldfieldのサウンドに近いもののように思えます。Oldfieldの生ギターだけがやけに生々しいですね。

 

オーケストラのレコーディングは、この作品のために召集されたミュージシャンで構成された「Sinfonia Sfera Orchestra」によって行われました。Oldfieldはクラシカルギターを演奏しており、ゲストとしてはピアニスト Lang Lang、ヴォーカリストの Hayley Westenraが参加しています。ミキシングはOldfieldによって行われたと記載があるので、純粋なオーケストラの演奏を録音しただけの作品でなく、おそらく上記のギター、ピアノ、ヴォーカルなどは別録音だったのだと思います。

本作は2つのパートに分かれていて、それぞれ7トラックから構成されていますが、切れ目なく繋がっているので、実質上はPart 1とPart 2というまとまりで考えるのが適切です。

<トラックリスト>
Part 1
1. Harbinger 
2. Animus
3. Silhouette 
4. Shabda 
5. The Tempest 
6. Harbinger (reprise) 
7. On My Heart 

Part 2
8. Aurora 
9. Prophecy 
10. On My Heart (reprise) 
11. Harmonia Mundi
12. The Other Side 
13. Empyrean 
14. Musica Universalis 

 

Oldfieldが所属する英国のMercury Recordsを傘下に持つUniversal Musicから「クラシック作品」としてリリースされた本作ですが、全般的な印象としては本格的なクラシック音楽というよりは「ライトクラシック」といったほうがいいような作品に仕上がっています。その分聴きやすいのですが、イージーリスニング的に聴こえてしまうのが難点でしょうか。(OldfieldとJenkinsがその路線を狙ったのかどうかは不明ですが)

また、Part 1 の冒頭「Harbinger」には「Tubular Bells Part 1」の導入部のピアノシーケンスをなぞったフレーズが配され、Part 2の最終トラック「Musica Universalis」では 「Tubular Bells Part 1」エンディングのクライマックス部分のリフレイン風のフレーズを使ったりと、彼の代表作 Tubular Bells を強く意識させるような作品となっています。

このことは、Oldfieldの初期作品しか聴いたことが無い人にとっては、この作品が Mike Oldfield のものだという親近感を与える効果があったんだろうと思いますが、個人的には、Oldfieldはこれまでも繰り返しTubular Bell からの引用や変奏を作品に反映していることを知っているので、「またか」というイメージが強かったです。せっかくの初のクラシック作品なんだから、もっと斬新な曲にしてもよかったのにという思いが当時ありました。ライトクラシック風というのも中途半端感が否めませんでした。

今回、この記事を書くためにこの作品を何度もCDを聴いたのですが、当時感じた印象を拭うことはできていません。曲そのものはまとまりがあってよくできていると思うのですが、私がMike Oldfieldに求めているものはちょっと違うんですね。以下の文は、私が15年前に、ブログで書いた感想文(もう削除しました)の一部ですが、今でもこの内容には概ね同意です。
で、その中身ですが、『Tubular Bells』の構成要素があちこちにちりばめられており、ある意味では「Tubular Bells変奏曲」といえなくもありません。ただ最近のオールドフィールドの作品に共通して感じられる「薄味感」がここでも感じられます。オーケストラによる演奏は豪華に盛り上げてくれますが、要所要所で挿入されるオールドフィールドのクラシックギターがあまりにも余裕しゃくしゃくすぎて緊張感に欠けるなあという印象。彼があと15年若ければ(Tubular Bells IIの頃であれば)もっと違った作品になっていたように思えてなりません。まあ、この作品の内容を否定するわけではありませんが年齢的なものが感じれられて少し寂しい気がします。一部のインタビューでは「もう音楽はやらないかも」といった発言もあって今後が心配なところですが、これが最後になるのは個人的にはちょっと待ってもらいたいもんです。「Incantation Part3」のように延々とエレクトリックギターを弾きまくる…といった曲をもう一度聴いてみたい…というのはもう無理なんでしょうかねぇ。

 

と、すこし否定的なことを書きましたが、チャートアクションは良く、UKのクラシックチャートではNo.1を獲得したり、なんとアメリカのビルボードの「クラシカルクロスオーバー」の部門でも10位まで上昇した、久しぶりの面目躍如といった感じのアルバムだったことは特筆すべき事項です。

Part 1

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Part 2

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