Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

It Bites 「Kiss Like Judas」

1980年代、プログレッシヴロックのジャンルでメジャーレーベルからデビューして活躍した数少ないバンドのひとつがこの It Bites。とはいえ、世間の風当たり(というか所属していたヴァージンレコードからのプレッシャー?)で、徐々にプログレ色を薄めざるを得なくなった不遇のバンドとも言えなくはないのですが、そんな彼らが1988年にリリースしたのが、このアルバム Once Around The World です。

 

It Bites / Once Around The World

アルバム収録の9曲中、15分に及ぶ大作のタイトルトラックと9分程度の1曲を除いては4分前後にコンパクトにまとめられた曲が多いのですが、そのどれもが高度な演奏テクニックをフィーチャーした力作となっています。イメージとしてはジェネシスとイエスを混ぜ合わせたようなサウンドで、中心人物であるギター/ヴォーカルのFrancis Dunneryのギターテクニックとピーター・ゲイブリエル風のヴォーカルがバンドの個性となっていました。(日本では美形ルックスのキーボード奏者 John Beckが人気でした・・・)

この「Kiss Like Jusas」もシングルでもリリースされたようなポップな曲なのですが、キャッチーなメロディーが印象的な個人的に好きな曲。冒頭シンセのヴィブラフォン風の3拍子のフレーズから普通のエイトビートに切り替わるイントロが、プログレッシヴロックをベースとするバンドが置かれた状況を表しているようで興味深いです。

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It Bitesは、次作ではプログレ色が薄まってハードなポップロック路線を指向することになり、さらに中心人物のDunneryが脱退したりで活動を停止してしまいます(2000年代に再結成していますが)。

プログレッシヴロックを演奏するバンド自体も、グランジオルタナロック、ロック以外ではヒップホップやR&Bがポップミュージックシーンの主流になってきて、次第にメジャーレーベルからは敬遠されるようになってインディーレーベルから作品をリリースするようになっていくのもこの時期あたりからという個人的な印象です。