Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

PSY・S 「遠い空」

PSY・Sの音楽活動は1980年代中頃から約10年間で、バンドサウンドを基本にしたポップソングを作ってきましたが、ユニークな音楽の制作手法にも注目されていました。

ひとつはサウンドの制作方法で、Fairlightに代表されるサンプリングを活用して、それをギミック的に使うだけではなく、サンプリング音源を使ってバンドサウンドを構築していった点が挙げられます(さすがにギターは生ですが)。

昔読んだ雑誌の記事(の記憶)によれば、特に打ち込みで使用するドラムとストリングスの音色にこだわりが強かったようです。今でこそドラム音源やストリングス音源はリアルなライブラリがあって、どんなバンドでもゴージャスなストリングスを簡単にアレンジの中に組み込むことができますが、PSY・S松浦雅也さんはそういう現在のサウンド制作の先駆者だと思います。

もう1点はレコーディングの手法で、こちらも様々な実験をしていました。

1989年のアルバム Atlas では、一旦ライン録音した演奏をレスリースピーカーを通して鳴らして、その音を録音するという方法を取ったり、1990年のアルバム Signal では、アナログレコーディングした音源を一旦アナログレコードの原盤に記録して、それを再生した音をデジタルに変換してCDにしたり、さらに1991年のアルバム Holiday では、メンバーが自宅録音した演奏の音源を使用して曲を作ったりと、当時誰もやらないようなことを実行していて、The Bugglesのアルバムタイトルではありませんが「モダンレコーディングの冒険」を実際にやってきたというのは、それが成功したか失敗したかは別にして価値あることだったんじゃないかと考えています。

 

えーっと、前置きが長くなってすみません。

アルバム Atlas には一般に名曲として認知されている「Wondering up and down ~水のマージナル~」 が収録されていますが、個人的に一押しなのがこの「遠い空」です。

PSY・S / Atlas

このレスリースピーカーを通して録音されたオルガンやシンセ、エレピなどが作り出す背景音の浮遊感がスッゴイ気持ちいいです。特に間奏部分。そして、それら演奏をバックにくっきりと浮かび上がるCHAKAさんのメリハリのあるヴォーカルの対比が見事です。

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