Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

Yes 「Walls」

現在では誰もが手軽に行うことができるハードディスクレコーディングの先駆けといえる作品が、Yesの1994年のアルバム Talk です。前作 Union でメンバーが8人となったYesでしたが、Steve Howe、Rick Wakeman、Bill Brufordが脱退し、残ったメンバーはアルバム 90125Big Generator を制作した1980年代のYesのメンバーでした。その中で最もYesというバンドの存続にこだわっていたのが、意外にも90125から参加した Trevor Rabin でした。

Rabinは、YesのシンボルとなるのはやはりヴォーカルのJon Andersonだと考え、Andersonにコンタクトを取って、二人のコラボレーションで曲を作ろうと試みました。その時に活用したのがハードディスクレコーディングらしく、Rabinの自宅スタジオで、Mac用のミュージックワークステーションソフトウェア Digital Performer を使って演奏をハードディスクに録音し、Rabin自身で編集、ミキシングなどを行ったようです。(ただし、当時のコンピューターの性能では編集に膨大な時間が掛かったらしいです)

Rabinの並々ならぬ努力によって、当時としては革新的な手法で制作されたアルバム Talk でしたが、セールス的には散々だったようです。確かに収録された曲の多くは重鈍な印象で、当時の流行りの音楽とはかけ離れたものだったことと、従来のYesファンからすると、Rabin色が強く、まるで彼のソロアルバムのように見えてしまい、拒否反応がでてしまったのも敗因だったのかなと思います。

でも個人的にはこのアルバムは嫌いじゃないです。というか、これ以降に制作されたYesのアルバムのどれもこの作品を上回る完成度のものは無いと思っています。

Yes / Talk

 

そんなアルバム Talk の中で最もポップな曲がこの「Walls」です。実はこの曲は、元々 RabinがRoger Hodgson (元Supertramp)と共作した曲で、Yesでは数少ないメンバー以外との共作になっています。ただ共作者のRoger Hodgsonは、Andersonが1980年代後半に Yesを脱退した後の後任としてオファーされていたこともあり、Andersonとしては、この曲をアルバムに入れることに難色を示していたらしいです。でもシングルとして売れる曲をというレコード会社の要請で渋々了承したのではないかと思われます。

曲のヴォーカルは、バッキングも含めてほとんどがRabinによるもので、Andersonは後半の方でちょっと参加しているだけですが、最後の方でオリジナルには無い歌詞を突っ込んで、ちゃかり共作者の一人に名前が入っているところは、ある意味さすがです。

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メロディにHodgsonっぽいところがあって、SupertrampやRoger Hodgsonの作品が好きな私的には好きな曲なんですが、Yesっぽくないといえば確かにその通りですね・・・。