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Supertrampアルバム紹介 その4:Crisis? What Crisis?

前作 Crime Of The Century は本国イギリスだけではなくアメリカでもリリースされ、それに合わせて1975年4月からは北米でのコンサートツアーを実施しましたが、この時点では米国での知名度はまだ低い状態でした。それでもバンドはアメリカ進出を指向するようになります。その理由はよく分かりませんが、彼らが所属するA&MレコードがLAを本拠としていたのも一因だったように思います。

北米ツアー終了後、1975年の夏からバンドは次作アルバムのレコーディングをロサンゼルスで実施しましたが、この時点で新たな曲が少なかったこともあって、前作制作時に採用されなかった曲も多かったようです。その後アルバム制作はイギリスに持ち帰って行われリリースされたのは1975年12月でした。

アルバム制作は前作同様、Ken Scottととの共同プロデュースで、前作で多用した効果音とストリングスは本作でも使用されていて基本路線は前作を踏襲したものとなりました。

Supertramp / Crisis? What Crisis?

Side 1
1. Easy Does It
2. Sister Moonshine
3. Ain't Nobody But Me
4. A Soapbox Opera
5. Another Man's Woman
Side 2
1. Lady
2. Poor Boy
3. Just A Normal Day
4. The Meaning
5. Two of Us

 

少し変化があったのはサウンドがより軽快になった点で、前作と比較すると楽曲が小粒になって存在感がやや劣るのですが、サウンド自体はよく練られたもの(これはKen Scottの功績も大きいと推察)になっています。アメリカ進出を指向する彼らの方向性が見えてきたアルバムだと言えるでしょう。結果的にはこの方向性が功を奏すことになっていきます。

二人のリードヴォーカル/ソングライター Rick Davies と Roger Hodgson のコラボレーションも多くみられ、バンドとしての結束がより強くなったように思える作品です。

 

Easy Does It
街の中を口笛を吹きながら歩いている効果音の後、Hodgsonのつぶやくようなヴォーカルで始まる短い曲。

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Sister Moonshine
Hodgsonのアコースティックギターの軽やかなカッティングによるイントロが今までのバンドサウンドとちょっと違った印象を与えるアップテンポなフォーク調のポップソング。サウンドはHodgsonのヴォーカルとギターがメインですが、ところどころでDaviesのヴォーカルで合いの手が入るのがSupertrampらしいところ。後半のリフレインではDaviesのハーモニカとJohn Helliwellのクラリネット(?)がフィーチャーされています。

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Ain't Nobody But Me
オルガンのフェードインから一気にヘヴィなバンドサウンドに突入するDaviesらしいブルース調の曲。重めのヴァースから軽やかなコーラスに切り替わるものユニーク。後半は再びヘヴィなギターサウンドとコーラスでフェードアウト。

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A Soapbox Opera
演説風のSEでフェードインして始まるHodgsonらしいメランコリンクなメロディが特徴の曲。途中からストリングスも加えてドラマチックに盛り上がります。

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Another Man's Woman
再びこの曲もフェードインから。アルバムを通して聴くと分かるのですが、前曲がフェードアウトして静寂になった後から聴こえてくるピアノのイントロが何ともミステリアス。上手い演出だと思います。この曲の聴きどころは3分頃から始まるDaviesによる流麗なピアノソロとそれに続くHodgsonによるギターソロとHelliwellのサックスソロ。スリリングな演奏で、アルバムの一つの聴きどころになっています。

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Lady
前作に収録された「Dreamer」と似たタイプのHodgsonのエレピ連打による伴奏が印象的な曲。シングルとしてもリリースされました。

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Poor Boy
Daviesのエレピから始まるシャッフルスタイルの曲。Helliwellのオーボエソロがいい味出しています。

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Just A Normal Day
イントロの陰鬱なピアノから転調して歌メロに入るところがユニークな曲。この曲では珍しくDaviesとHodgsonが交互にヴォーカルを取る形になっています。サックスソロの後再度転調してイントロのフレーズでフェードアウトしていきます。

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The Meaning
またまたフェードインから始まる曲で、最初のヴァースはギターとベースとクラリネットによる演奏でその後ドラムとキーボードが加わって徐々に盛り上がっていきます。後半部のバンド全員による緊迫感あふれる演奏(特にHelliwellのクラリネット)が素晴らしいです。

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Two of Us
パイプオルガン風のイントロに導かれて始まる Hodgson のアコースティックギター弾き語り主体の小品です。シンプルな分メロディーの良さが堪能できます。

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