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Supertrampアルバム紹介 その3:Crime Of The Century

1971年に2ndアルバム Indelibly Stamped を発表したSupertrampでしたが、セールス的には失敗し、バンドの活動を支援してきたスポンサーからも見放され、窮地に立たされた状態になります。それでもまだ諦めなかったメインライターのRick DaviesとRoger Hodgsonは、他のバンドメンバーを一新して再スタートすることを決意し、オーディションによるメンバー集めを繰り返し行ったようです。その努力の結果、集められたメンバーが、ベースのDougie Thomson、ドラムのBob Siebenberg、そして管楽器奏者のJohn A. Helliwellであり、この5人によって全盛期を築いていくことになります。

DaviesとHodgsonは過去の失敗の反省から、よりポップな音楽性を目指して、この時期多くの曲を作曲し、その中から厳選した8曲を新作アルバムに収録することとしました。アルバム制作は、1973年にデヴィッド・ボウイの名作アルバム 「ジギー・スターダスト」をボウイと共同でプロデュースしたKen Scottに、共同プロデュースを依頼して行われました。

Supertramp / Crime Of The Century

Side 1
1. School
2. Bloody Well Right
3. Hide In Your Shell
4. Asylum
Side 2
1. Dreamer
2. Rudy
3. If Everyone Was Listening
4. Crime Of The Century

 

このアルバム、いわゆる「1970年代の名盤」などと呼ばれていたりするのですが、Supertrampの全ての作品のなかでも最高傑作といっていいアルバムです。特にRoger Hodgsonのソングライターとしての成長がバンドのイメージを大きく変えました。Hodgsonの曲は従来はフォーキーなイメージのものが多かったのですが、よりポップでかつメランコリックな曲をバンドに提供するようになり、Rick Daviesのブルージーな曲と良いコントラストを醸しだすようになりました。さらにHodgsonは本作からギターだけではなくピアノも弾くようになり、ツインキーボードバンドという色合いが濃くなっています。

アルバムではこのHodgsonとDaviesの曲を交互に配することで、独特なSupertrampの世界が出来上がりました。この構成はHodgsonがバンドを脱退するまで続きます。また収録曲にはラブソングは一切なく、社会性を帯びたテーマや孤独を扱ったようなシリアスなテーマで統一されています。

各曲に関連性はないのですが、曲間をほとんど無くすことでトータルアルバムのようなイメージを感じさせます。その他、初めてストリングスセクションや効果音を導入したりといったところは共同プロデューサーの Ken Scott の手腕も大きかったように思われます。

もう一つバンドの躍進に貢献したのは新加入の John A. Helliwellの存在です。過去のバンドメンバーにもフルート奏者やサックス奏者がいたSupertrampですが、Helliwellはサックス、クラリネットといった管楽器だけでなく、バッキングヴォーカルも担当し、メガネ顔の人懐っこいキャラクターを生かしてコンサートではMCを行ったりと、バンドの人気を得るために結構重要な役割を果したんじゃないかと思います。

左からDougie Thomson、Bob Siebenberg、John A. Helliwell、Roger Hodgson、Rick Davies
(写真はおそらく1977年頃のもの)


School
イントロで暗闇に響きわたるハーモニカのフレーズから始まり、Hodgsonのハイトーンヴォイスでミステリアスなメロディーが歌われます。間奏でのピアノソロが曲の緊張感を引き立てています。

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Bloody Well Right
Daviesのヴォーカルで歌われるR&B調の曲。ヴァースのヘヴィなリフとちょっとコミカルなサビが対象的。シングルヒットにもなったようです。

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Hide In Your Shell
Hodgsonの作品の中でも珠玉の名曲。静かなピアノの弾き語り風からはじまり、徐々にドラマチックに盛り上がっていく展開が素晴らしいです。Helliwellのサックスも要所要所でいい味を出しています。

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Asylum
Daviesの弾き語りから始まるこれまたドラマチックなナンバー。後半部ではストリングスセクションも加え大いに盛り上がります。最後の最後に鳩時計の音が入っているのが面白いです。

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Dreamer
Hodgsonが演奏するエレピが軽快にリフを刻むポップな曲。Hodgsonのポップセンスが光ります。

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Rudy
序盤はDaviesのピアノ弾き語りで始まる曲で、中盤以降はギターをフィーチャーしてアップテンポな展開となる部分がカッコイイ曲。

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If Everyone Was Listening
今度はHodgsonのピアノ弾き語りによる美しくてメランコリックな曲。間奏部のHelliwellのクラリネットソロが哀愁を漂わせます。

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Crime Of The Century
アルバムタイトル曲はDaviesのヴォーカルは最初の1分半ほどで、その後はギターソロ、ピアノソロ、サックスソロと続き、最後にフェードアウトしながら1曲目の「School」のハーモニカが聴こえてきます。

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本当に良く出来たアルバムで、アルバムジャケットのイメージとも見事に調和している作品です。個人的にはもう何百回と聴いてきているのですがいまだに飽きることはありません。