Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

Mike Oldfield アルバム紹介 その10.5:「Pictures in the Dark」「Shine」、The Complete Mike Oldfield

今回は番外編ということで。

1984年に DiscoveryThe Killing Fields の2作のアルバムを制作したOldfieldは、ライブツアー終了後、1987年のアルバム Islands の発表までしばらく休養期間に入ります。この期間、新曲としてはシングル「Pictures in the Dark」を1985年に、1986年にはシングル「Shine」を発表したのみでした。

 

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「Pictures in the Dark」は、ヴォーカルにノルウェーの歌手 Anita Hegerlandとイギリスのボーイソプラノ歌手として当時人気だったAled Jonesを起用し、バッキングヴォーカルに Barry Palmer、そしてOldfield自身も後半部でヴォーカルを披露していて、それらをパッチワークのように組み合わせて構成された曲です。ドラムは打ち込みと思われます。フェアライトのSeries IIIの発売が1985年だったので、おそらくこの曲ではSeries IIIを使っているのではないかと思います。

 

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「Shine」はYesのJon Andersonが歌う、Oldfieldの曲としてはちょっと意外な明るい雰囲気のナンバー。作詞はJon Andersonが担当しています。

 

上記の2曲はどちらもヴィデオクリップが制作されていて、これらを観ると気づくと思いますが、いずれもコンピューターグラフィックスによるアニメーション(今見るとシンプルなものですが)が使用されています。この頃、Oldfieldの興味はビデオ制作に向いていて、イギリスで新しいホームスタジオを作って、最新のビデオ制作用のコンピューターを導入していたようです。(どんだけ金持ってんねんという感じですが・・・)

で、このビデオ制作への興味が昂じて、Oldfieldは、次のアルバム全曲を収録したビデオアルバムを作ってしまうことになります。

 

一方、1985年にはレコード会社側で編集した2枚組ベストアルバム The Complete Mike Oldfield がリリースされました。Side 1が過去のシングルに収録されたインストルメンタル曲、Side 2が同じくシングルとなったヴォーカル曲、Side 3が初期四作とThe Killing Fieldsからの抜粋、Side 4がライブ音源という構成になっていて、Oldfield自身は選曲に関与していないようですが、Side 1とSide 4が過去のアルバムでは聴くことができなかった音源が多かったこともあり、ファンには嬉しい企画アルバムでした。

ジャケットも美しく、丁寧に仕上げられた好盤だと思います。

Mike Oldfield / The Complete Mike Oldfield

 

 

ZABADAK 「砂の扉」

ZABADAKの1990年のアルバム 遠い音楽、翌年の 私は羊、1993年の の3作は、同傾向のサウンドで、吉良知彦さん/上野洋子さんのコンビによるZABADAKの完成形といえるものとなっていて、一般的にも人気の高いアルバムと思っています。私もこの3作は大好きです。

アルバム 私は羊 はその3作の中では少し地味な感じはしますが、吉良さんと上野さんそれぞれが作る曲がバランスよく収まっているんじゃないかと思います。また、このアルバムから打ち込みの要素が減り、ゲストミュージシャンによる演奏の比重がぐっと増えてきたのも特徴でしょうか。

ZABADAK / 私は羊

このアルバムに収録された「砂の扉」は、上野洋子さん作曲の作品(作詞は濱田理恵さん)。上野さんらしい民族音楽の特徴を取り込んだ曲なのですが、リズムが変拍子になっていて、イントロ・ヴァースが5拍子、コーラスが3連の4拍子になっていてちょっと異色です。でもZABADAKは他の曲でも変拍子を使っている曲があるので、さほど違和感はないです(自分は聴きなれてるからかも)。

上野さんが演奏するティンホイッスルと吉良さんのギターが中心となるサウンドはアコースティック色が強く、上野さんの美しいヴォーカルと相まって、この時期のZABADAKを象徴している曲だと思います。

 

YouTubeにはスタジオ録音の音源はこれしか見つからなかったのですが、一応参考まで。

ZABADAK (ザバダック) - Suna no tobira (砂の扉) [Remaster] - YouTube

陳綺貞「旅行的意義」

香港や台湾のポップスは、今では全然聴いていないのですが、唯一フォローしているのはこの人、台湾のシンガーソングライター 陳綺貞(チアー・チェン)。1998年のデビューから今まで、オリジナルアルバムを7枚しか出していない超寡作な人ですが、現在も一定の人気を維持しています。

陳綺貞の持ち味というのは、その哲学的な歌詞にあるといわれていますが、残念ながら私は歌詞の深いところまでは分かりません。そういう要素もあるとは思いますが、私は彼女の書く叙情的でメランコリックなメロディと甘い歌声が大きな魅力だと思っています。発表されるアルバムには必ずといっていいくらいキラーチューンと呼ぶべき曲が入っていて、その曲の求心力の強いことといったら。

この曲「旅行的意義」は、2005年のアルバム「華麗的冒険」に収録された曲で、陳綺貞の代表作でもあります。2009年の映画「台北に舞う雪(台北飄雪)」の主題歌にもなりました。

陳綺貞 / 華麗的冒険


MVはアルバムリリースの時期に制作されたもの。途中、沖縄の風景も見ることができます。歌詞の内容は他のサイトにもあるのでここでは書きませんが、MVの最後では歌詞の内容とは少し異なり、一人で沖縄旅行に行ってしまった恋人の男性の帰りを待たずに、陳綺貞演じる女の子がスクーターで独り旅立つシーンが印象的です。

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王菲 「夢中人」

もう1曲カバーソングを。

1990年代の中盤から2000年代の前半までは、中華圏(香港、台湾)のポップスを良く聴いていました(女性Vo.ばかりですが・・・)。

この時期の女性シンガーではやはり王菲フェイ・ウォン)がダントツでしょう。

王菲の名前を一躍有名にしたのは、1994年の香港映画「恋する惑星(ChungKing Express)」への出演とその挿入曲「夢中人」だと思います。

この曲は、アイルランドのロックバンド Cranberriesのシングルヒット曲「Dreams」のカバー。演奏はオリジナルに忠実で、歌い方もオリジナルを踏襲した形になっています(この曲独特のスキャットも再現)。この頃の王菲はCranberriesの他にもCocteau Twinsの曲をカバーしたりと、ドリームポップの影響を受けた作品を制作していて、他のアーティストたちと一線を画していたイメージがありました。当時の香港ポップスの最先端を走っていたと思います。

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「夢中人」は、香港でリリースされた広東語のアルバム 胡思亂想 に収録されています。

王菲 / 胡思亂想

 

同時期に台湾でリリースされた北京語のアルバム 天空 には「争脱」というタイトルで同じ曲が録音されています。こちらは歌詞と演奏ともに異なります。

王菲 / 天空

 

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原曲のCranberriesのバージョンはこちら。

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「Imagine」covered by Julian Lennon

カバーソングつながりということで。

Julian Lennon / Imagine

"for Global Citizen's Stand Up For Ukraine"という言葉が添えられたこのMVは、Julian Lennonアメリカのロックバンド Extreme のギタリスト Nuno Bettencourt によるパフォーマンス。Julian Lennonのコメントによれば、父親 John Lennon のこの曲をオフィシャルの場で歌うのはこれが初めてだそうです。

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サブスクでは、この曲を含む3曲入りのシングルが公開されていて、その中の1曲 「Every Little Moment」のMVも発表されています。Julianが昔書いた反戦をテーマにした曲とのことです。

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若いころのJulian Lennonの歌声は父親の声に本当に似ていたのですが、今年で59歳になるJulianが歌う今回の「Imagine」を聴くと、さすがに年齢を重ねた声になっている感じで、そう考えるとJohn Lennonが生きていたらこのような声で歌っていたのかなとも想像したりしています。(Julian本人にはどうでもいいことだと思いますが・・・)

Julian Lennonは、2020年に元StyxのDennis De Youngをフィーチャーしたシングルを発表しているようです。前作となるアルバム Everything Changes がリリースされたのが2011年なので(このアルバムも13年ぶりだった)、そろそろ新作アルバムを、という期待も持ってます。

「君の知らない物語」 covered by 花澤香菜

Supercellの「君の知らない物語」は、TVアニメ「化物語」のエンディングテーマとして使用された有名な曲です。私もアニメを観てこの曲を知りました。2009年のリリースなので、あれからもう13年も経ったんですね。

nagi(やなぎなぎ)さんの押しつけがましくない誠実なヴォーカルが、歌詞の内容と絶妙にマッチして感動的な歌になっています。

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ところで、YouTubeの「CrosSing」というチャンネルで、声優やアニソンアーティストがカバーソングを歌うという企画をやっているのですが、ここで「君の知らない物語」のカバーが取り上げられています。歌っているのは声優の花澤香菜さん。

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これを最初聴いたときちょっとびっくりしました。キーはたぶんオリジナルと同じなのに、全然聴こえ方が違う。声が違うので当たり前といえばそうなんですが、ちょっと別次元の歌に仕上がっています。花澤さんのハスキー成分を含んだチャーミングな声はやっぱり独特ですね。後半盛り上がっていく部分でもあまり熱くならずサラリと歌ってしまうところがこの人らしいです。

歌い終わってからもサービスパフォーマンスをするところは、さすがプロって感じでした。

Nick Mason & Rick Fenn 「Lie for a Lie」

Pink Floyd のドラマー Nick Mason と 、当時10ccのメンバーであったギタリスト Rick Fennによるコラボレーションアルバム Profiles(1985年発表)からシングルカットされた1曲。Rick Fennは、一時期Mike Oldfieldのバンドメンバーとしても参加して「Family Man」の共作者としても名を連ねています。

Nick Mason & Rick Fenn / Profiles

アルバムは、2曲を除いてすべてインストルメンタル。Rick Fennのクリーンなギターを生かした明るい曲が多いのですが、当時の流行りに合わせたエレクトリックドラムとシンセサイザーを多用した曲が多く、全般的に薄味な印象です。(長尺の曲「Profiles」は結構聴きごたえあるかなと思いますが・・・)

アルバムにヴォーカル曲を入れることになったのは、そういった事情もあってか、はたまたレコード会社の販促戦略か分かりませんが、この曲「Lie for a Lie」では、Pink FloydのDavid GulmourとMike Oldfieldの「Moonlight Shadow」でヴォーカルを担当した Maggie Reillyが歌っています。(メインはGilmourで、コーラスがReilly)

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なんかそれぞれの知り合いを連れてきて歌ってもらった感が強いですが、軽快なポップソングで悪くないです。