Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

遊佐未森 「I'll remember」

遊佐未森さんの作品にはケルティックな香りがする曲が多くあります。遊佐さんの場合、1990年代の作品の多くでケルトミュージックに接近した作品作りをしてきているので、ケルティックな要素が自己の音楽性の一部として身についている感もありますが、ちょうど2000年頃にエンヤの曲「Only Time」が日本でも話題になったこともあって、おそらくそのサウンドを意識したようなケルトニューエイジ風なシングル曲を発表しています。それがこの「I'll remember」。

2001年のアルバム honoka に収録されています。

遊佐未森 / honoka

この曲を最初に聴いたときには、いかにもエンヤブームに便乗したように見えてちょっと距離を置いていたんですが、しばらくしてから聴いてみると、遊佐未森さんらしい美しいヴォーカルとメロディはやっぱり素晴らしく、今ではお気に入りの曲の一つです。

この曲では、The Chieftains の Paddy Moloney がゲストとして招かれ、味わい深いホイッスルの演奏を披露しています。

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そういえば、この曲や東芝EMI時代のヴィデオクリップやライブ映像が収録されたDVD作品 clematis も持ってました。これも好きな作品です。

立山秋航 「キャンプ場のテーマ~本栖湖~」

2018年のTVアニメ「ゆるキャン△」のBGMも、ティンホイッスルの音色が印象的でした。

立山秋航 / ゆるキャン△ オリジナル・サウンドトラック

ゆるキャン△」のBGMは、全般的にはカントリー色が強いと思うのですが、ティンホイッスルの音がメロディ楽器として使用されている曲が多くて、アニメを観ながらBGMも楽しんでました。

このサウンドトラックの曲には、「キャンプ場のテーマ」と名付けられたトラックがいくつかあって、どれもアウトドアを感じさせる広がり感のある曲なのですが、ここではアニメの第1回で登場した本栖湖のキャンプ場のテーマを紹介しておきます。

4分前から現れるティンホイッスルで導かれる3拍子のケルティックなパートがイイ感じです。

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The Corrs 「Dreams」

ちょっと間が空きましたが、前回の記事でティンホイッスルというワードを出したので、ティンホイッスルがフィーチャ―されているポップソングを。

 

以前、The Corrsについては1st アルバム収録曲を紹介しました。

moonshineplus.hatenablog.com

 

Corrsは、基本的に Andrea Corr の歌をメインとしたグループで、インスト曲は数少ないのですが、トラッドカバーなどのインスト曲のときは、Andreaがティンホイッスルを演奏することが多いです。

でも、この「Dreams」は歌モノですが、ティンホイッスルの演奏も聴ける曲。1998年の2ndアルバム Talk On Corners 収録の曲で、Fleetwood Macの有名なヒット曲のカバーです。


The Corrs / Talk On Corners

Wikipediaによれば、このカバーバージョンは元々はFleetwood Macのトリビュートアルバムの為に録音されたものを、シングルバージョンとしてダンスミュージック風にリミックスしたものだそうです。その効果かイギリスでは大きなヒットとなりました。 Talk On Corners の最初のリリース時には収録されておらず、シングルヒットを受けての再発盤に収録されたということで、実は私が所有しているCDにはこの曲は入っていませんでした。なので、この曲の存在を知ったのは最近です・・・。

ティンホイッスルの演奏はイントロと間奏部と歌の背後で聴こえますが、ライブでは再現できないので、イントロと間奏部だけになっています。Andreaのヴォーカルも、オリジナルがStevie Nicksのあの存在感あるヴォーカルなのでさすがに顔負けする感じではありますが、チャーミングな色合いを出していていい感じです。

 

まずはスタジオ録音版をヴィデオクリップで。

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こちらは2000年のロンドンでのライブ映像。Andreaのティンホイッスルの演奏はちょっとだけですね。

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【CD買いました】u-full / 観星塔

CDなどのメディアを買うことはもう年間数枚になっていますが、サブスクで聴けないだとか、クレジットをじっくり見たいだとか、そのアーティストを応援したいなどの理由がCDを購入する動機となっています。そういうわけでこれからは、CDを購入したときにはブログで紹介したいと思います。

今年最初に買ったCDがこれ。以前記事に書いた 二人組ユニット CAPRICE のメンバーがサポートとして参加していることで知った、大阪を拠点として活動している二人組ユニットの u-full(ウフル)。もう活動歴は20年近くなるんですね。新作アルバムのトレーラーをYouTubeで聴いて気に入ったのでCDを買ってしまいました。

u-full / 観星塔

1. 観星塔
2. 発行体の研究 (instrumental)
3. Planetary Gear
4. The Seagull Flies
5. 三原色の科学 (instrumental)
6. 世界の果てで響く音
7. 星と消えた君を探して
8. Jellyfish&Whale (instrumental)
9. 北北西の風と君への手紙

太古の旋律(Bonus Track)

 

u-fullは、アコーディオン/ヴォーカルの寺田侑加さんとギターのフナハシダイチさんによるユニットで、アコースティックな楽器による演奏で、民族音楽プログレッシヴロックの要素を加味した音楽を作っています。本作が7作目のアルバムになるそうです。

クレジットを見ると、作曲・編曲は寺田侑加さんとフナハシダイチさんが同じくらいの比率で関与していて、どちらかのカラーが強いわけではないというところが逆にユニークじゃないかと思います。9曲中3曲がインストだったり、ティンホイッスルやアイリッシュフルートといった楽器を取り入れたケルティックな要素から、ZABADAKの影響を強く受けているのは間違いないです。でも全般的にヴァイオリンをフィーチャーしたアコースティック楽器によるアンサンブルになっているところは、アコースティック・アストゥーリアスのようにも聴こえます。個人的には、このアルバムではヴァイオリン(川瀬麻日香さん)とマリンバ(菊川望さん)のサウンドが特に印象的です。

寺田侑加さんのヴォーカルも元ZABADAK上野洋子さんやKARAK(現ZABADAK)の小峰公子さんの声質に近く、サウンドによくフィットして爽やかに響いてきます。

ちなみにWEBでこのアルバムを検索していると、プログレ専門店のWorld Disqueさんでもこのアルバムが紹介されていました。

wdisque.shop-pro.jp

 

YouTubeでは、このアルバムからはトレーラー以外では「Planetary Gear」のミュージックビデオがアップされています。この曲はアルバム中では最もポップなサウンドかなと思うので、アルバム全体の印象とはちょっと違うかもしれません。

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個人的には、1曲目のタイトルトラック「観星塔」がお気に入り。静かなヴァイオリンのイントロに導かれた歌のパートと、中盤部のサックスを交えた激しい演奏パート、そして緩やかなテンポに転じた後半部、そしてシームレスに次のインスト曲へ流れこむ約8分間の展開が素晴らしいです。

Mike Oldfield アルバム紹介 その22:Tubular Bells 2003

2003年はMike Oldfieldのデビュー作 Tubular Bells がリリースされてからちょうど30年目という年でした。これを記念して「Tubular Bells のリメイクバージョン」として制作されたのが、このアルバム Tubular Bells 2003 です。

Mike Oldfield / Tubular Bells 2003

Mike Oldfield 自身、1973年に制作された Tubular Bells については、レコーディングスタジオの使用期間が制限されていたこともあり、その音質に以前から不満をもっていました。そのため、Tubular Bellsの再レコーディングについてはかなり前から考えていたらしいのですが、Virgin Recordsとの契約で、25年間は再レコーディングできないことになっていました。 その制約がようやく解除され、30周年となる2003年のリリースを目指してこのリメイク版が構想されたとのこと。

アルバム制作にあたっては、まずオリジナルの Tubular Bells の録音ソースを16トラックの形でMac G4 へ取り込み(DAWとしてProTools を使用)、本来あるべきテンポに整えてからそれをガイドとして新しい録音トラックに差し替えるという作業を行ったそうです。

新しいレコーディングソースはLogic Audio Premium に録音され、ソフトシンセのトラックと共に、Fairlight Merlin という48トラックのハードディスクレコーダーに転送された後、ミックスダウンされたと、本作のDVD-Audio版のブックレットに記載されています。

CDのブックレットには、オリジナルの Tubular Bells 同様、いやそれ以上に使用楽器についてこと細かくリストアップされています。特に本作においてはオリジナルでは生楽器で録音されたパートが、ハードシンセやソフトシンセで代用されているものが結構あり、個々の機材で何の音色を出していたかまでクレジットされているのが興味深いです。

以下はCDブックレットからの抜粋です。


このアルバムは、オリジナルのTubular Bells のPart 1を11トラックに、Part 2を6トラックに分割された形で収録されています。これはOldfield本人が希望したものではなく、レコード会社からの要請に基づいてやむなくこうなったらしいです。そのため各トラックのタイトルもレコーディングする際に参照の為につけた名前がそのまま使用されていて、あまり深い意味はありません。

<トラックリスト>
Part One
  Introduction
  Fast Guitars
  Basses
  Latin
  A Minor Tune
  Blues
  Thrash
  Jazz
  Ghost Bells
  Russian
  Finale

Part Two
  Harmonics
  Peace
  Bagpipe Guitars
  Caveman
  Ambient Guitars
  The Sailor's Hornpipe

 

音の方ですが、オリジナルの完璧な再現を目的として制作されているため、一聴するとオリジナルと変わりないように感じるかもしれません。しかしよく聴くと、30年前のレコーディングでは成しえなかったサウンドがこのアルバムには展開されています。

ひとつはこの30年間でOldfield自身が身につけた演奏テクニックの幅広さや編曲能力の成長であり、もうひとつは録音技術の進歩(特にシンセやエフェクト等のデジタル技術)であったりするわけですが、「広がり感」と「透明感」が強調されているように感じます。この点は、1990年以降でのOldfieldの作風からはある程度予想はできていたことではありますが、Tubular Bells でこのようなサウンドに仕上げることの是非については個人的好みによると思います。

サウンドに関しては結構否定的意見が多いかなという印象ですが、聴きどころである「Finale」 のパートも実にクリアに仕上がっていてすごく聴きやすいです。クライマックスのチューブラーベルが打ち鳴らされる部分とその後の展開を聴いていると、盛り上げ方がスムーズで、Tubular Bells II の「The Bell」でのエンディングのような爽快感をたたえたサウンドになっています。

全般的には、オリジナルに対してエンターテインメント的な部分を加味した「成熟した Tubular Bells」 になっていると言えるのではないかと思います。

ただし、本作の後、2009年にオリジナルの Tubular Bells に音質的な面の改善が施されたリミックス盤がリリースされて、これがデフォルトとなっている現在においては、この Tubular Bells 2003 は「デジタルっぽいTubular Bells」というイメージとなるのは致し方ないですねぇ。オリジナルと並べて聴き比べて微妙な違いをみつける、といった楽しみ方もできますが、これはマニア向けかも・・・w。

 

YouTubeの音源は各トラックで分けてもあまり意味が無いので、プレイリストで貼りました。

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ちなみに、CDのほうにはおまけDVDも同梱されていて、そこにプロモーションビデオが収録されています。Tubular Bellsの冒頭部をダンスミックスとしたバージョンとなっていますが、これが意外と良い出来です。オフィシャル動画はないのですがご参考までに。(音源としては2015年にリリースされたベスト盤に収録されています)

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今年2023年は、Tubular Bells発表50周年となる年で、昨年から本国イギリスでは「Tubular Bells 50th Anniversary Celebration」と題して、ロイヤルフィルハーモニックオーケストラによるコンサートなどが行われていますが、これにはMike Oldfield本人は参加していません。マイクは今年で70歳になるのでライブでの演奏も難しいのかもしれませんが、2017年以降あまりニュースも無いので何か動きを見せてほしいという想いもあるんですよね・・・。

Styx 「Blue Collar Man (Long Nights)」

「音街レコード」の記事を書いて以来、懐メロモード(といっても1970年代後半ばかりですが・・・)が続いていますが、今回で一旦区切りをつけようと思います。

 

私がStyxの曲でアルバム全体として聴いているのは、CornerstoneParadise Theater と、Kilroy Was Here までの3作で、それ以前の曲はベスト盤でしか聴いたことがありませんでした。まあ今ならサブスクがあるので、聴こうと思えば過去のアルバムも全曲聴けるのですが、今のところそこまでは至ってません。

そんなStyxの古い曲の中で、好きな曲の一つがこの「Blue Collar Man (Long Nights)」。1978年のアルバム Pieces of Eight 収録でシングルとしてもリリースされました。ギタリストのTommy Shawの作曲でヴォーカルもShawが担当しているストレートなハードロックナンバーです。

Styx / Pieces of Eight

この曲の好きなところは何といってもイントロの印象的なハモンドオルガンのリフです。たぶんこのイントロはギターでもできたんでしょうが、ハモンドで鳴らすことでよりインパクトが強くなっていると思います。このイントロを聴いただけで一発でこの曲だと分かるんじゃないでしょうか。

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オフィシャルのライブシーンのヴィデオ映像がこちら。舞台セットからたぶん1983年のライブだと思いますが、皆若いですねぇ。Tommy Shawのギターソロもカッコいいです。Dennis DeYoungが演奏するオルガンは、大きなシンセ(オーバーハイム?)の下にセッティングされていてハモンドかどうかちょっとわかりづらいです。

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キーボードソロがある曲(その15):Led Zeppelin 「All My Love」

Led Zeppelin の1979年のアルバム In Through The Out Door は、前作のスタジオアルバム Presence から3年以上のブランクを置いて発表された作品で、リリース直後に ドラマーのJohn Bonham の急死により実質上のラストアルバムとなりました。 このアルバムに収録されているのが「All My Love」。ヴォーカルの Robert Plant とベース奏者の John Paul Jones による曲です。

 

前作 Presence では、キーボード類の使用を避けて、ドラム+ベース+ギターのシンプルな構成のストイックともいえる作風で評価が高いのですが、このアルバムは逆にバラエティに富んだ作風で、悪く言うと統一感のないアルバムだといわれます。このアルバムではJonesによるキーボード類、特にシンセの大幅な導入が特徴になっていて、当時流行だったイギリスのニューウェーヴ勢のサウンドを意識したのではないか思われる作風となっていて、そういう意味ではこれからのZeppelinサウンドの模索に向けた実験だったともいえます。個人的にはこのアルバム好きですよ。

Led Zeppelin / IN Through The Out Door

 

この曲「All My Love」でもシンセが大活躍。当時最新のシンセ YAMAHA GX-1 によるカラフルなサウンドが映える曲です。Zeppelinらしくないソフトでポップな曲ですが、アルバムにはこれ以外にも「らしくない曲」が多く入っているのでこういうのもアリかと。シンセソロは2分30秒あたりから。単音のソロからシンフォニックなフレーズに切り替わるところがカッコいいです。

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