シンガーソングライター Eric Carmen の代表曲「All By Myself」。シングルとしてリリースされた1975年のヒット曲で、ロマンチックなピアノのメロディとナイーブな歌詞が印象的なパワーバラードです。1996年にはセリーヌ・ディオンがカバーして、こちらもヒットしましたね(このカバーはちょっと過剰演出気味で個人的にはイマイチですが)。
Yesはこのような個人のマテリアルを元にして、メンバー達がアレンジを加えて曲を発展させていくという制作手法を昔から行っています。時にはあまりいじくりすぎてオリジナルの良さが無くなってしまう例(「Into The Lens」など)もあるのですが、この曲はRabinのデモをベースに、よりテクニカルでスリリングな曲へと進化させることに成功していると思います。
前回紹介したスーパートランプのアルバム Breakfast In America がアメリカでヒットしていた1979年頃、同様にサウンドをポップ化してアメリカ進出を図っていたジェネシスと比較して語られたことがあったようです。どちらもプログレッシヴロックが原点にあるバンドで、音楽的には大きく異なっていると思うものの、上手くポップ化を成し遂げたという意味では共通点があるのでそのような比較が行われたのかなと思います。
そんな時期のGenesisが1980年にリリースしたアルバムが Duke 。「Turn It On Again」や「Misunderstanding」といった曲をアメリカでヒットさせ、アメリカのポップフィールドに大きく躍進したアルバムです。
前作でエンジニアを務めた Peter Hendeson を共同プロデューサーとして迎えて制作されたアルバムは、当初は”Hello Stranger"というタイトルが予定されていましたが、より楽しいイメージを与えるためという考えから、Breakfast In America というタイトルで1979年3月にリリースされました。
Supertramp / Breakfast In America
Side 1 1. Gone Hollywood 2. The Logical Song 3. Goodbye Stranger 4. Breakfast In America 5. Oh Darling Side 2 1. Take The Long Way Home 2. Lord Is It Mine 3. Just Another Nervous Wreck 4. Casual Conversations 5. Child Of Vision
前作ではバンド自身のプロデュースとした結果、二人のソングライター Rick Davies と Roger Hodgson それぞれが作る楽曲が対極にある個性として明確になった傾向があったのですが、本作では個々の楽曲に双方の共同作業と思われる要素が存在して、アルバムとしての統一感が強く出ています(特にDavies作曲の曲にそれを強く感じます)。これは、長期間のレコーディング作業という要因もありますが、Peter Henderson という共同プロデューサーの存在が大きかったのではないかと思っています。Hendersonが、考え方も生活スタイルも異なる Davies とHodgson をバラバラにならないようにオーガナイズしたのではないかなと推察しています。
Gone Hollywood Crime Of The Century 以降、アルバムの冒頭はHodgson作曲の曲が続いていたのですが、本作ではDavies作のこの曲が1曲目。結構テクニカルな構成なのですが、DaviesのヴォーカルにHodgsonのヴォーカルやコーラスを挟み込むことで、ポップ感も生み出しているという実はスゴイ曲だと思っています。
The Logical Song アメリカではシングルカットされ、シングルチャート6位まで上昇したバンドとしては最大のヒット曲。ヴァース部分は4/4+4/4+2/4というリズムで構成されています。歌詞の面では"please tell me who I am"というフレーズに代表されるようにHodgsonらしい人間の内面に目を向けたものとなっています。それ以外にも ”... sensible, logical, responsible, pratical...."、"... dependable, clinical, intellectual, cunical ..." というふうに形容詞を羅列した歌詞がユニークな曲。
Breakfast In America 日本でもシングルとして発売されヒットしたアルバムタイトル曲。日本では一番有名なSupertrampの曲でしょう。Hodgsonが1970年ごろに作った曲で歌詞もオリジナルのままだそうです。そのためシンプルで平凡な歌詞になっていますが、ポップな面を押し出したアルバムでとびきりポップな曲ということでこの曲が選定されたようです。一方でDaviesはこの曲はあまり好きではなかったらしく、演奏には参加せずバックヴォーカルのみに関与したとのこと。演奏にチューバの音が入っていますが、こちらは外部ミュージシャンによるものです。
Take The Long Way Home アナログ盤ではここからSide 2。Side 1の最初と同じようにフェードインから始まります。この曲はHodgsonの跳ねるようなピアノプレイが印象的な曲。間奏部のHelliwellのクラリネットとDaviesのハーモニカの掛け合いがコミカルでSupertrampらしい演奏だと思います。アメリカではシングルカットされて最高10位を獲得しました。
Child Of Vision 前の3曲は楽曲的には若干インパクトが弱いのですが、アルバム最後のこの曲はSupertrampらしいスリリングでシンフォニックな曲。Hodgsonのエレピの連打によるイントロから始まり、歌のパートは曲の中盤で終って残りの4分間はインストパート。ここではDaviesの華麗で緊張感溢れるピアノソロ、そして最後にはHelliwellの悲壮感漂うサックスソロがフィーチャ―されています。