Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

Fleetwood Mac 「Sara」

「Sara」は1979年のFleetwood Mac のアルバム Tusk に収録された曲。作詞曲とリードヴォーカルは Stevie Nicks が担当しています。シングルカットされてヒットもしました。個人的には Fleetwood MacでのNicksのヴォーカル曲では一番好きな曲。

アルバム収録バージョンは6分半ほどあるのですが、曲構成としては比較的シンプルでリズムもトリッキーなところは無く、Nicksのヴォーカルも淡々と歌っている感じで、ちょっと単調なように感じるかもしれません。もちろんNickの存在感はバンドの中でも際立っていて、その憂いのある声も魅力的なのですが、この曲で私が好きなところは、ヴォーカルのエコーとリヴァーブ処理、そして背後に霞のように配置されたバッキングヴォイスで、このサウンドメイクがこの曲の神秘的で幻想的なイメージを作り上げているように思います。

ちょっと10ccの「I'm Not In Love」のサウンドとの類似点も見出せそうな気もする、レコーディングによる音響効果の魅力が詰まった曲です。

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こちらはライブ演奏でのヴィデオクリップで、テンポが速いのもありますが、スタジオ録音版とは若干イメージが違いますね。

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Fleetwood Mac / Tusk

キーボードソロがある曲(その26):Eric Carmen 「All By Myself」

シンガーソングライター Eric Carmen の代表曲「All By Myself」。シングルとしてリリースされた1975年のヒット曲で、ロマンチックなピアノのメロディとナイーブな歌詞が印象的なパワーバラードです。1996年にはセリーヌ・ディオンがカバーして、こちらもヒットしましたね(このカバーはちょっと過剰演出気味で個人的にはイマイチですが)。

まずはシングルバージョンから。

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シングルバージョンは4分半ほどの長さですが、彼のソロデビューアルバム Eric Carmenに収緑されたバージョンは約7分と長尺の演奏時間となっています。

これはアルバムバージョンの中間部に挿入されたピアノソロの有無の違いによるものなのですが、Wikipediaによれば、この曲はこの間奏部から作られたらしいです。そしてこのロマンチックなメロディの間奏部に似合うヴォーカルパートのメロディとして参照したのがラフマニノフピアノ協奏曲第2番の第2楽章でした。ヴァース部分はほぼまるごと拝借しているので、現在はこの曲の作曲者はカルメンラフマニノフとなっています。

幼少の頃からクラシック音楽とヴァイオリン、そしてピアノに親しんだというCarmenは、この曲でもピアノを披露しており、間奏部のピアノ協奏曲風のパート(この部分はCarmen自身の作曲)でも美しいピアノ演奏を聴かせてくれています。

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ラフマニノフピアノ協奏曲第2番の第2楽章は、YouTubeでも多くの演奏を聴けるのですが、今回はこちらから。
クリスティアン・ツィマーマン(ピアノ)とボストン・シンフォニー・オーケストラの演奏で、指揮は先日逝去された小澤征爾さんです。

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そのEric Carmenさんも先日お亡くなりになったとのこと。でもこの曲は今後も歌い継がれるエバーグリーンな名曲だと思います。R.I.P.

 

Eric Carmen / Eric Carmen

Yes 「Changes」

1983年に復活して「Owner Of A Lonely Heart」が世界的な大ヒットとなったYesですが、この復活の立役者はプロデューサーのTrevor Hornと、新たにバンドに加入したソングライターであり、ギタリスト兼マルチ奏者のTrevor Rabinの2人です。

過去の作品からの大きなサウンドの変化から古いファンからは賛否両論あった(でも一般にはウケた)アルバム 90125 に収録されていたのがこの曲「Changes」。アルバムでのクレジットは Trevor Rabin と Jon Anderson とAlan Whiteの共作となっていますが、ベースとなったのはTrevor Rabin作のデモ曲でした。

 

Rabinは後にYes在籍時代のデモ音源をまとめたアルバム 90124 を発表していますが、その中に「Changes」のデモ曲が収録されています。

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Yesはこのような個人のマテリアルを元にして、メンバー達がアレンジを加えて曲を発展させていくという制作手法を昔から行っています。時にはあまりいじくりすぎてオリジナルの良さが無くなってしまう例(「Into The Lens」など)もあるのですが、この曲はRabinのデモをベースに、よりテクニカルでスリリングな曲へと進化させることに成功していると思います。

 

デモ曲には無かった冒頭約75秒間のイントロはAlan Whiteのアイディアがメインかと思われます。マリンバによる変拍子のリズムに畳みかけるようなドラム、そして切り裂くようなギターといったテクニカルな演奏がめっちゃカッコイイ。ポップになったと言われるアルバムですが、イエスらしい要素も上手く残しているところはプロデューサーのTrevor Hornのセンスでしょうか。続くヴォーカルパートは前半はデモ曲をなぞったものになりますが、後半部はAndesonのソロパートが入るなど大きくアレンジしていて特にハイトーンのコーラスが際立っています。

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エンディングのキメもかっこいいです。個人的にはアルバム 90125 の中で一番好きな曲です。

 

Yes / 90125

Steve Hackett 「Spectral Mornings」

Steve Hackettの1979年発表のアルバム Spectral Mornings のタイトルトラック。Hackettの代表的なインストルメンタル曲として知られていますが、最初はヴォーカル曲として作曲したものだそうで、Hackettがメンバーにヴォーカルのメロディをギターで披露したところ、当時ヴォーカル担当のPete Hicksが「ギターバージョンのままの方がいい」と言ったことからインストルメンタル曲としてレコーディングしたとのこと。確かに<ヴァース/コーラス>の繰り返しで構成されるヴォーカル曲であってもおかしくない構成になっていると思います。

ここでのHackettのギター演奏は、時折テクニカルな部分はあるもののロングトーンをメインとしたロマンチックで美しいメロディを奏でていて、さらにNick Magnusのストリングス系シンセやノヴァトロンによる分厚いバッキングとともに夢の中のような音空間を作り上げています。個人的にも大好きな曲。

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Steve Hackett / Spectral Mornings

 

これは2019年のライブ映像のようです。曲の最後ではタッピングによるフレーズも鳴らしています。

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もう一つ、これはカバ―バージョンですが、イギリスのプログレッシヴロックバンド MagentaのリーダーであるRob Reedが2015年に企画したEP「Spectral Mornings」に収録された曲です。ヴォーカル曲としてアレンジされていて、ヴォーカルはMagentaのChristina BoothとBig Big TrainのDavid Longdonが担当しています。Steve Hackett本人も曲後半でエレクトリックギターで参加しています。

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Genesis 「Duke's Travels ~ Duke's End」

前回紹介したスーパートランプのアルバム Breakfast In Americaアメリカでヒットしていた1979年頃、同様にサウンドをポップ化してアメリカ進出を図っていたジェネシスと比較して語られたことがあったようです。どちらもプログレッシヴロックが原点にあるバンドで、音楽的には大きく異なっていると思うものの、上手くポップ化を成し遂げたという意味では共通点があるのでそのような比較が行われたのかなと思います。

 

そんな時期のGenesisが1980年にリリースしたアルバムが Duke 。「Turn It On Again」や「Misunderstanding」といった曲をアメリカでヒットさせ、アメリカのポップフィールドに大きく躍進したアルバムです。

Genesis / Duke

 

アナログのLPレコードでは標準的な収録時間は片面20分(両面で40分)と言われている(さらに収録時間が長くなると音質が悪化する)中で、Genesisのアルバムはこれを大きく上回る50分以上を収録するものが多く、本作Duke もトータル55分を超えるアルバムとなっています。

収録曲は12曲で、冒頭3曲と最後の2曲はそれぞれがメドレー形式で構成されていて他の7曲を挟み込むような構成となっています。(上記の5曲と中間の「Turn It On Again」を合わせて「Duke Suite (The Story of Albert)」と呼ばれることもあるようです。

 

Duke's Travels」と「Duke's End」はアルバム最後を飾るメドレー。ほとんどがインストパートとなっているこの曲で大きくフィーチャーされているのはPhil Collinsの手数の多いドラムとTony Banksの音の粒が降り注ぐような華麗なキーボードプレイで、躍動感とシンフォニック感が共存する非常にカッコイイ曲になっていると思います。トータル11分にもおよぶ長い曲ですが、全くだれることなく聴くことができます。個人的にはGenesisの曲の中で一番好きな曲。

 

YouTubeで公開されているオフィシャルの音源は2曲に分かれてしまっていますが、この2曲のつなぎの部分もめっちゃカッコイイのでぜひ連続で聴いてほしいです。

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Supertrampアルバム紹介 その6:Breakfast In America

前作 Even In The Quietest Moments ...アメリカでのヒットによって、アメリカの音楽業界からも注目を置かれるバンドとなったSupertramp。次作の制作にもレコード会社から十分な時間と資金を与えられたものと思われます。

アルバム制作は1978年4月からのリハーサル(デモ作成)から始まり、5月から12月までの期間でロサンゼルスのヴィレッジ・レコーダーのスタジオでレコーディングが行われ、クリスタル・サウンドのスタジオでミックスとマスタリングが完了したのが1979年の2月だったそうです。(詳しくは以下のサイト参照)

www.soundonsound.com

 

前作でエンジニアを務めた Peter Hendeson を共同プロデューサーとして迎えて制作されたアルバムは、当初は”Hello Stranger"というタイトルが予定されていましたが、より楽しいイメージを与えるためという考えから、Breakfast In America というタイトルで1979年3月にリリースされました。

Supertramp / Breakfast In America

Side 1
1. Gone Hollywood
2. The Logical Song
3. Goodbye Stranger
4. Breakfast In America
5. Oh Darling
Side 2
1. Take The Long Way Home
2. Lord Is It Mine
3. Just Another Nervous Wreck
4. Casual Conversations
5. Child Of Vision

 

前作ではバンド自身のプロデュースとした結果、二人のソングライター Rick Davies と Roger Hodgson それぞれが作る楽曲が対極にある個性として明確になった傾向があったのですが、本作では個々の楽曲に双方の共同作業と思われる要素が存在して、アルバムとしての統一感が強く出ています(特にDavies作曲の曲にそれを強く感じます)。これは、長期間のレコーディング作業という要因もありますが、Peter Henderson という共同プロデューサーの存在が大きかったのではないかと思っています。Hendersonが、考え方も生活スタイルも異なる Davies とHodgson をバラバラにならないようにオーガナイズしたのではないかなと推察しています。

サウンド面では、過去のアルバムでは多用していた「生ストリングス」と「効果音」を排除したというのがポイントでしょうか。バンドだけの演奏にすることでポップな曲を揃えたこのアルバムの魅力を引き出すことができたのはないかと思います。

 

結果としてこのアルバムは、アメリカで累計400万枚、全世界で累計2000万枚というビッグヒットとなりました。当時バンド名すら一般にはあまり知られていなかった日本でも(アルバムジャケットに起用された「リビーおばさん」の来日プロモーションの効果もあって)、本作はヒットして「スーパートランプといえばブレックファースト・イン・アメリカ」というイメージが定着しましたよね。

 

Gone Hollywood
Crime Of The Century 以降、アルバムの冒頭はHodgson作曲の曲が続いていたのですが、本作ではDavies作のこの曲が1曲目。結構テクニカルな構成なのですが、DaviesのヴォーカルにHodgsonのヴォーカルやコーラスを挟み込むことで、ポップ感も生み出しているという実はスゴイ曲だと思っています。

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The Logical Song
アメリカではシングルカットされ、シングルチャート6位まで上昇したバンドとしては最大のヒット曲。ヴァース部分は4/4+4/4+2/4というリズムで構成されています。歌詞の面では"please tell me who I am"というフレーズに代表されるようにHodgsonらしい人間の内面に目を向けたものとなっています。それ以外にも ”... sensible, logical, responsible, pratical...."、"... dependable, clinical, intellectual, cunical ..." というふうに形容詞を羅列した歌詞がユニークな曲。

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Goodbye Stranger
この曲もシングルカットされ、アメリカでは最高15位まで上昇しました。軽やかなエレピの演奏が印象的な曲。Daviesの作曲ですが、ヴァース部分のヴォーカルをDavies、コーラス部分をHodgsonが担当する構成となっていて、よりライトな印象を与えています。エンディングでは珍しくHodgsonのギターソロがフィーチャーされています。管楽器奏者のJohn Helliwellの演奏が入っていないのも珍しいところ(Wikipediaによれば、間奏部の口笛はHelliwellによるものらしいです)。

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Breakfast In America
日本でもシングルとして発売されヒットしたアルバムタイトル曲。日本では一番有名なSupertrampの曲でしょう。Hodgsonが1970年ごろに作った曲で歌詞もオリジナルのままだそうです。そのためシンプルで平凡な歌詞になっていますが、ポップな面を押し出したアルバムでとびきりポップな曲ということでこの曲が選定されたようです。一方でDaviesはこの曲はあまり好きではなかったらしく、演奏には参加せずバックヴォーカルのみに関与したとのこと。演奏にチューバの音が入っていますが、こちらは外部ミュージシャンによるものです。

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Oh Darling
Daviesによるラブソング。この曲でも中間部にHodgsonのヴォーカルパートを入れるという工夫で、重くなりがちなDaviesの曲にポップ色を付け加えています。

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Take The Long Way Home
アナログ盤ではここからSide 2。Side 1の最初と同じようにフェードインから始まります。この曲はHodgsonの跳ねるようなピアノプレイが印象的な曲。間奏部のHelliwellのクラリネットとDaviesのハーモニカの掛け合いがコミカルでSupertrampらしい演奏だと思います。アメリカではシングルカットされて最高10位を獲得しました。

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Lord Is It Mine
Hodgson作のスピリチュアルな内容の歌。比較的シンプルなバラードなのですが、後半に掛けて Bob Siebenberg 演奏のドラムがドラマチックに曲を盛り上げます。

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Just Another Nervous Wreck
「Nervous Wreck」とは「神経衰弱」という意味。歌詞の内容とは裏腹に、Davies作にしては珍しくライトなロックンロールナンバーに仕上がっています。

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Casual Conversations
Daviesのエレピ演奏をメインにしたレイドバック感のある短い曲。間奏部のHelliwellのサックスがムーディな味を出しています。

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Child Of Vision
前の3曲は楽曲的には若干インパクトが弱いのですが、アルバム最後のこの曲はSupertrampらしいスリリングでシンフォニックな曲。Hodgsonのエレピの連打によるイントロから始まり、歌のパートは曲の中盤で終って残りの4分間はインストパート。ここではDaviesの華麗で緊張感溢れるピアノソロ、そして最後にはHelliwellの悲壮感漂うサックスソロがフィーチャ―されています。

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最近聴いている曲いろいろ

4曲。コメント少なめで・・・

 

■ 子ザメちゃん(CV:花澤香菜) 「よりみち」

Webアニメ「おでかけ子ザメ」のテーマ曲。子ザメ役の花澤香菜さんによる「サメ語」の歌がフレンチポップのようにも聴こえたりします。ちなみにこの曲、リピート再生すると切れ目なくエンドレスで聴けるようになってます。

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■ ブレイバーン(CV:鈴村健一) 「ババーンと推参!バーンブレイバーン」

TVアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」のOPテーマ曲。昭和のロボットアニメのテーマ曲を数多く手掛けた渡辺宙明さんの作風をオマージュしたかのような曲調が印象的です。

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イヤホンズ 「リクエスト」

高橋李依さん、高野麻里佳さん、長久友紀さんによる声優ユニット イヤホンズの新作アルバム 手紙 は、全7曲すべて「手紙」をテーマにしたコンセプトアルバムで、声優というスキルを絶妙にフィーチャーした素敵な作品となっています。なかでもこの曲が個人的には一番好きかも。

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■ u-full 「Starless」

寺田侑加さんとフナハシダイチによるユニット u-full が自身のYouTubeチャンネルで発表しているカバ―ソングから King Crimsonの名曲のカバー。アコギとアコーディオンをメインとしたアレンジが新鮮です。

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