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Supertrampアルバム紹介 その6:Breakfast In America

前作 Even In The Quietest Moments ...アメリカでのヒットによって、アメリカの音楽業界からも注目を置かれるバンドとなったSupertramp。次作の制作にもレコード会社から十分な時間と資金を与えられたものと思われます。

アルバム制作は1978年4月からのリハーサル(デモ作成)から始まり、5月から12月までの期間でロサンゼルスのヴィレッジ・レコーダーのスタジオでレコーディングが行われ、クリスタル・サウンドのスタジオでミックスとマスタリングが完了したのが1979年の2月だったそうです。(詳しくは以下のサイト参照)

www.soundonsound.com

 

前作でエンジニアを務めた Peter Hendeson を共同プロデューサーとして迎えて制作されたアルバムは、当初は”Hello Stranger"というタイトルが予定されていましたが、より楽しいイメージを与えるためという考えから、Breakfast In America というタイトルで1979年3月にリリースされました。

Supertramp / Breakfast In America

Side 1
1. Gone Hollywood
2. The Logical Song
3. Goodbye Stranger
4. Breakfast In America
5. Oh Darling
Side 2
1. Take The Long Way Home
2. Lord Is It Mine
3. Just Another Nervous Wreck
4. Casual Conversations
5. Child Of Vision

 

前作ではバンド自身のプロデュースとした結果、二人のソングライター Rick Davies と Roger Hodgson それぞれが作る楽曲が対極にある個性として明確になった傾向があったのですが、本作では個々の楽曲に双方の共同作業と思われる要素が存在して、アルバムとしての統一感が強く出ています(特にDavies作曲の曲にそれを強く感じます)。これは、長期間のレコーディング作業という要因もありますが、Peter Henderson という共同プロデューサーの存在が大きかったのではないかと思っています。Hendersonが、考え方も生活スタイルも異なる Davies とHodgson をバラバラにならないようにオーガナイズしたのではないかなと推察しています。

サウンド面では、過去のアルバムでは多用していた「生ストリングス」と「効果音」を排除したというのがポイントでしょうか。バンドだけの演奏にすることでポップな曲を揃えたこのアルバムの魅力を引き出すことができたのはないかと思います。

 

結果としてこのアルバムは、アメリカで累計400万枚、全世界で累計2000万枚というビッグヒットとなりました。当時バンド名すら一般にはあまり知られていなかった日本でも(アルバムジャケットに起用された「リビーおばさん」の来日プロモーションの効果もあって)、本作はヒットして「スーパートランプといえばブレックファースト・イン・アメリカ」というイメージが定着しましたよね。

 

Gone Hollywood
Crime Of The Century 以降、アルバムの冒頭はHodgson作曲の曲が続いていたのですが、本作ではDavies作のこの曲が1曲目。結構テクニカルな構成なのですが、DaviesのヴォーカルにHodgsonのヴォーカルやコーラスを挟み込むことで、ポップ感も生み出しているという実はスゴイ曲だと思っています。

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The Logical Song
アメリカではシングルカットされ、シングルチャート6位まで上昇したバンドとしては最大のヒット曲。ヴァース部分は4/4+4/4+2/4というリズムで構成されています。歌詞の面では"please tell me who I am"というフレーズに代表されるようにHodgsonらしい人間の内面に目を向けたものとなっています。それ以外にも ”... sensible, logical, responsible, pratical...."、"... dependable, clinical, intellectual, cunical ..." というふうに形容詞を羅列した歌詞がユニークな曲。

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Goodbye Stranger
この曲もシングルカットされ、アメリカでは最高15位まで上昇しました。軽やかなエレピの演奏が印象的な曲。Daviesの作曲ですが、ヴァース部分のヴォーカルをDavies、コーラス部分をHodgsonが担当する構成となっていて、よりライトな印象を与えています。エンディングでは珍しくHodgsonのギターソロがフィーチャーされています。管楽器奏者のJohn Helliwellの演奏が入っていないのも珍しいところ(Wikipediaによれば、間奏部の口笛はHelliwellによるものらしいです)。

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Breakfast In America
日本でもシングルとして発売されヒットしたアルバムタイトル曲。日本では一番有名なSupertrampの曲でしょう。Hodgsonが1970年ごろに作った曲で歌詞もオリジナルのままだそうです。そのためシンプルで平凡な歌詞になっていますが、ポップな面を押し出したアルバムでとびきりポップな曲ということでこの曲が選定されたようです。一方でDaviesはこの曲はあまり好きではなかったらしく、演奏には参加せずバックヴォーカルのみに関与したとのこと。演奏にチューバの音が入っていますが、こちらは外部ミュージシャンによるものです。

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Oh Darling
Daviesによるラブソング。この曲でも中間部にHodgsonのヴォーカルパートを入れるという工夫で、重くなりがちなDaviesの曲にポップ色を付け加えています。

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Take The Long Way Home
アナログ盤ではここからSide 2。Side 1の最初と同じようにフェードインから始まります。この曲はHodgsonの跳ねるようなピアノプレイが印象的な曲。間奏部のHelliwellのクラリネットとDaviesのハーモニカの掛け合いがコミカルでSupertrampらしい演奏だと思います。アメリカではシングルカットされて最高10位を獲得しました。

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Lord Is It Mine
Hodgson作のスピリチュアルな内容の歌。比較的シンプルなバラードなのですが、後半に掛けて Bob Siebenberg 演奏のドラムがドラマチックに曲を盛り上げます。

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Just Another Nervous Wreck
「Nervous Wreck」とは「神経衰弱」という意味。歌詞の内容とは裏腹に、Davies作にしては珍しくライトなロックンロールナンバーに仕上がっています。

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Casual Conversations
Daviesのエレピ演奏をメインにしたレイドバック感のある短い曲。間奏部のHelliwellのサックスがムーディな味を出しています。

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Child Of Vision
前の3曲は楽曲的には若干インパクトが弱いのですが、アルバム最後のこの曲はSupertrampらしいスリリングでシンフォニックな曲。Hodgsonのエレピの連打によるイントロから始まり、歌のパートは曲の中盤で終って残りの4分間はインストパート。ここではDaviesの華麗で緊張感溢れるピアノソロ、そして最後にはHelliwellの悲壮感漂うサックスソロがフィーチャ―されています。

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