The Bugglesはヒット曲「ラジオスターの悲劇」が収録された The Age of Plastic が有名ですが、1981年にリリースされたこの2ndアルバムは、ほぼ解散状態で作成されたものらしく、商業上は失敗だったようです。メンバー2人(Trevor HornとGeoff Downs)のうちDownsのほうは、製作途中でこの後結成されるAsiaに参加してしまったため、ほぼHornのソロプロジェクトだったそうです。アルバムジャケットもHornの眼鏡らしきものがモチーフとなっていてこのことを如実に表しているのではないでしょうか。
左が表面、右が裏面(JIMCO盤CDより)
このアルバムは最新のレコーディング手法を使って製作され、後の音楽に影響を与えたといわれていますが、正直どのへんが影響を与えているかは私はよく分かりません。ただ、このアルバムで当時の最新電子楽器であるFairlight CMIが使用され、後々ポップミュージックで多用されるオーケストラヒットを曲の中で紹介していることは明らかだと思います。アルバムジャケットの裏側のイラストは、このFairlightの画面の音声波形をイメージしているもののようで、Hornとしてもこれをアピールしたかったのかなと思っています。
収録されている曲は比較的地味かなと思いますが、バグルスの2人が揃ってYesのメンバーとして参加した Drama に収録された「Into the Lens」の原曲である「I Am A Camera」やオーケストラヒットが聴ける「Vermilion Sands」が聴きどころかなと思います。改めてアルバムのクレジットを見てみると全編ドラムマシーンを使用しているみたいで、これも結構画期的だったのかもしれません。
Fairlight CMIは、現在は当然のように使用されている楽器をデジタル方式でサンプリングして音を出す「サンプラー」の先駆けとなる楽器で、当時はSinclavierやE-MUといった競合もありましたが、イギリスのミュージシャンにはFairlightが好まれたようです。ただ非常に高価だったので、誰でも買えるような代物ではなかったらしいです。私が好きなアーティストであるMike OldfieldもFairlight CMIを所有しており(金持ち?)、1982年のアルバム Five Miles Out の見開きジャケットの内側の写真にFairlightらしき楽器が写っています。また、彼が1984年に製作した映画「キリングフィールド」のオリジナルサウンドトラックに収録された「Etude」(「アルハンブラ宮殿の想い出」のアレンジ版)のMVにもFairlight CMIが出てきます。(1分15秒あたりから)
この曲でメロディーを奏でるパイプ系の音や後半のパッド系の音はFairlight CMIによるものです。