Pink Floydの1975年のアルバム Wish You Were Here(邦題:炎~あなたがここにいてほしい)に収録の曲「Welcome To The Machine(邦題:ようこそマシーンへ)」はちょっと異色な曲です。
ここで鳴っている音はほとんどがシンセサイザーの音色。Pink Floydは過去にもシンセの音を巧みに織り込んだ曲を作っていますが、ここまで極端な例はこれ以降も無かったと思います。
この曲「Welcome To The Machine」は、ロック界を含むショービジネスを「マシーン」に例えて皮肉ったものと言われています。その「マシーン」を音で表現するために、シンセサイザーが多用されたのだと思うのですが、そのサウンドは意外と人間的なものとなっています。
Pink Floydのシンセの使い方は、ELPのキース・エマーソンのようなテクニックを披露するものではなく、シンセとエフェクトによる音響を重視しているもので、この点はキーボード奏者であるRichard Wrightのセンスによるものが大きいようです。このアルバム Wish You Were Here の他の曲でもWrightのキーボード演奏が印象的なものが多く、Wrightのバンドサウンドへの寄与という面では、このアルバムがピークだったように思います。個人的にはPink Floydのアルバムの中では本作がベストです。
本作以降、Roger Watersのコンセプト指向がさらに強くなって、このアルバムで聴けるような浮遊感のあるシンセサウンドは影を潜めてしまいます。逆にその結果として The Wall のようなメガヒットを生み出すことになるのですが・・・。
Pink Floyd / Wish You Were Here
ちなみにこの曲のオフィシャルな映像作品もYouTubeで観ることができます。バンドのライブで使用されたものらしいですが、ちょっと残虐なシーンもあったりするので年齢制限されているようです。