Moonshine+

個人的に好きな曲たちについて書いています。

Yes 「Sound Chaser」

Yesの最高傑作アルバムは何といっても1972年の Close To The Edge(邦題:危機)でしょう。A面に19分弱の1曲、B面に10分前後の2曲という大作指向のアルバムにもかかわらず「聴きやすい」というのがこのアルバムの最大の特長で、複雑な展開や演奏があっても、どの曲にも明確なメロディとハーモニーとロック的なリズム(ノリ)を兼ね備えている点がリスナーの支持を得られている要因だと思っています。

この傑作アルバム以降のYesは、大作指向を拡大させた次作 Tales from Topographic Oceans (邦題:海洋地形学の物語)、脱退したキーボード奏者のRick Wakeman に代わって Patrick Moraz をバンドに迎えてテクニカルな演奏の限界に挑戦したかのようなサウンドを繰り広げたアルバム Relayer を発表しますが、個人的にはどちらもちょっと苦手です。バンドとしてはよりプログレッシヴな方向に進むための試行錯誤だったのだと思いますが、聴きやすさに難があってとっつきにくいのが正直なところです。

 

今回はそんな苦手なアルバム Relayer から1曲。1974年リリースのこのアルバムは Close To The Edge と同様の曲構成になっていて、おそらく Close To The Edge を意識して制作されたのではないかと思います。そういう意味でこの曲「Sound Chaser」は「Siberian Khatru」と同様の位置づけにあたるのかなと思ったりしていますが、「Siberian…」よりもさらに複雑で激しい演奏が繰り広げられます。

この曲で最もキレた演奏をしているのは Steve Howe のギターで、中盤部のリズム隊が無い状態でのヴァイオリン奏法、スライドギターや掻きむしるようなカッティングなど、まさに一人舞台の演奏が繰り広げられます。新加入のMorazのキーボードもイントロのジャジーなエレピや後半のHoweのフレーズをトレースしたかのようなシンセソロなどで存在感をアピールしています。また曲の大半で明確なビートを刻まない Chris Squire のベース演奏のせいもあって、破綻寸前の音の塊が押し寄せてくる感で圧倒される曲です。

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Yes / Relayer

このアルバムはYesとしてはテクニカル指向の頂点であったことは間違いないですが、かなりマニアックなサウンドとなってしまったため、1970年代中盤以降の音楽シーンの中でバンドが生き残るためには、方針変更を余儀なくされることになる、臨界点のような作品だといえると思います。